偽物の汽車
假火車
むかし、ある田舎の村に、汽車が通る事になりました。
很久很久以前,某个乡村的村子里,有一辆火车经过。
ある晩の事、汽車を走らせている運転手の耳に、近づいてくる汽車の音が聞こえてきました。
有一天晚上,火车司机的耳朵里传来了火车的声音。
シュッポ、シュッポ。
呜--,呜--。
「おや? 前から汽車が? そんなはずは?」
“咦?前面有火车?怎么可能?”
運転手は、ふと前を見てびっくりです。
司机突然往前看,吓了一跳。
なんと前から、別の汽車が走ってくるのです。
前面竟然有别的火车开过来。
「あっ、あぶない!」
“啊,危险!”
運転手は慌てて急ブレーキをかけると、急いで汽車を飛び出しました。
司机慌忙急刹车,急忙跑出了火车。
すると不思議な事に、正面から近づいていた相手の汽車が影も形もないのです。
不可思议的是,从正面靠近的对方的火车没有影子也没有形状。
「そっ、そんな馬鹿な」
「是啊,你真是个混蛋。」
しかしこんな事が、それから何度もあったのです。
但是这样的事,之后发生了好几次。
そして今晩も不思議な汽車が現れて、走っている汽車に近づいてきました。
然后今晚又出现了一辆神奇的火车,向行驶的火车靠近。
何度も何度も同じ目に会っている運転手は、汽車のブレーキをかけるどころか、反対にスピードをどんどんあげました。
多次遭遇同样遭遇的司机,不但没有刹车,反而不断加快了速度。
「よし、今夜はだまされないぞ! 幽霊か何だか知らないが、覚悟しろ!」
“好,今晚我可不会上当!我不知道是不是幽灵,你要做好心理准备!”
シュッポ、シュッポ。
呜--,呜--。
シュッポ、シュッポ。
呜--,呜--。
ドカーン!
砰!
二台の汽車は大きな音を立ててぶつかりましたが、そのとたん、不思議な汽車はパッと消えてしまいました。
两辆火车发出很大的声音撞上了,但就在这时,不可思议的火车突然消失了。
さて、その晩遅くに、薬屋の戸を叩く者がありました。
那么,那天晚上很晚,有人敲了药店的门。
「こんな時間に、誰だろう?」
“在这样的时间里,是谁呢?”
店の主人が出てみると、外にいたのはお寺の小僧さんです。
店主出去一看,外面的是寺庙的小和尚。
「和尚(おしょう)さんがやけどしました。やけどの薬をわけてください」
“我被烫伤了,请给我开烫伤的药。”
「それはお気の毒に。それではこれをどうぞ」
“那太遗憾了。那么请收下这个。”
「ありがとう」
“谢谢。”
小僧さんは薬を受け取ると、走って帰って行きました。
小和尚一收到药,就跑回去了。
次の日、薬屋の主人は、和尚さんをおみまいに行きました。
第二天,药店老板去探望和尚。
すると和尚さんは、元気でピンピンしています。
于是和尚精神饱满地打了个招呼。
「あの、和尚さま。やけどをされたのでは?」
“那个,和尚,是不是被烫伤了?”
薬屋の主人から昨日の話を聞いた和尚さんは、不思議な顔をしました。
和尚从药店老板那里听到了昨天的故事,脸上露出了不可思议的表情。
「はて。わしはやけどをしておらんぞ。それにわしは一人暮らしで、寺には小僧は一人もおらん。おるのは、裏のやぶに住んでいるタヌキぐらいのものだ。・・・うん、もしや」
「咦?我没有被烧伤。而且我是一个人生活,寺庙里一个小和尚也没有。在的地方只有住在村子里的狸猫。・・・嗯,也许吧。」
和尚さんは裏のやぶに行くと、タヌキの巣穴をのぞき込みました。
和尚去了后面的草丛,窥视了狸猫的巢穴。
すると頭にやけどをしたタヌキが、やけどの薬をせっせと塗り込んでいたのです。
头部被烧伤的狸猫不停地涂上烧伤的药。
「こりゃタヌキ。これは一体、どういう訳だ?」
“这是狸猫。这到底是怎么回事?”
和尚さんが尋ねると、タヌキは訳を話しました。
和尚一问,狸猫就说出了原因。
「実は、わたしの家のすぐそばを汽車が通る様になってから、うるさくて昼寝も出来ません。それで汽車に化けて汽車をおどかしていたのですが、ゆうべは突っ込んで来た汽車に頭をぶつけて、ごらんのありさまです」
“其实,火车从我家旁边经过之后,吵得我连午觉都睡不着。于是我就变成火车吓唬火车,昨天晚上把头撞到闯进来的火车上,你就看到了。”
「そうか。うわさのお化け汽車は、お前だったのか。だが、いつまでもこんな事をしていては、そのうち命を落とすぞ。寺の静かなところにお前の小屋を作ってやるから、そこに引っ越すがいい」
“是吗?传说中的妖怪火车是你吗?但是,如果你一直这样做的话,不久就会丧命的。我会在寺庙安静的地方给你盖个小屋,你可以搬到那里去。”
こうして静かな小屋に引っ越したタヌキは、二度と汽車に化ける事はなかったそうです。
就这样搬到安静的小屋里的狸猫,再也不会变成火车了。