大いびき善六
大伐木工善六
むかしむかし、善六(ぜんろく)という木びき(→木を切り倒す仕事)がいました。
很久很久以前,有一种叫做善六的伐木(→砍倒树木的工作)。
大男のくせに怠け者でしたから、一日かかっても仲間の半分ほどしか仕事がはかどりません。
虽然是个大男人却很懒,工作一天却只能做同伴的一半的工作量。
「善六かよ、あいつはとてもものになるめえ」
“善六啊,那家伙成不了大事。”
みんなは善六を、『木びき』でなく『小びき』だと馬鹿にしていました。
大家都说善六不是伐木工是锯木架。
それを聞いて、善六は面白くありません。
听了这些,善六很不高兴。
そこで近くの神社にお参りをして、日本一の大びきになれる様に願をかけるとにしたのです。
于是他去附近的神社参拜,祈祷能成为日本第一的大伐木工。
「何とぞ神さま、神社の前に寝そベっている大きな石のウシをひける程の力を授けたまえ」
“神啊,请赐予我力量,让我把躺在神社前的大石牛锯开。”
やがて、満願(まんがん→願かけが終わる日)の日が来ました。
不久,满愿的日子到来了。
善六は試しに、寝そべりウシをひいてみる事にしました。
善六试着锯了一下躺着的牛。
ギイコー、ギイコー・・・
嘿咻,嘿咻
善六のノコギリは、たちまち石で出来た大きなウシを、真っ二つに切り割ってしまいました。
善六的锯子立刻把石头做成的大牛切成两半。
「やった! もう今までの『小びき』の善六ではないぞ! これからは『大びき』の善六さんと呼んでもらおうか」
“太好了!已经不是以前的锯木架善六了!今后请叫我‘伐木工善六吧。”
ところが山へ入って仕事にとりかかったものの、さっぱり仕事がはかどりません。
但是进了山开始工作,工作却完全没有进展。
石を真っ二つに出来たノコギリなのに、うまく木が切れないのです。
虽然是把石头切成两半的锯子,但是树却不能很好地锯断。
その様子を見ていた親方が、ゲラゲラと笑いました。
看着他那个样子,别的师傅咯咯地笑了。
「善六よう。願かけが間違っていたんじゃねえか? 木びきは木をひくのが仕事だぞ。お前は石をひくとしか頭になかったろうが」
“善六啊,你不是许愿错了吗?伐木的工作就是砍树,你脑子里只有锯石头。”
それを聞いて、善六はハッと目が覚めました。
听了那个,善六突然醒悟了。
「そうだ、おらは力持ちを良い事に、天狗になっていたのかもしれん。よし、もういっペん神さまにお願いしてみよう」
“对了,是神仙怕我用力气大闯祸、走了歪路。我要回去再拜托一下神明。”
改心した善六の目からは、ポタポタと涙がこぼれていました。
从改过自新的善六的眼睛里,滴滴答答地流着眼泪。
「神さま、おらが間違っていました。心を入れ替えて、ちっこい丸太をひく事からやり直します。どうか見守って下さいまし」
“神啊,我错了。我会洗心革面,重新开始锯小小的原木。请您一定要守护我。”
そして善六が一晩中かかって、やっと一本の丸太をひき終えた時、善六の腕にはまるで石の様な力こぶが出来ていました。
然后善六花了一整夜,终于把一根原木锯完的时候,善六的手臂上长出了像石头一样的力气。
善六は、その日から人が変わった様に仕事に励みました。
善六从那天开始就像换了个人一样努力工作。
励むにつれて、その仕事の確かさが評判になっていきます。
随着努力,对他评价慢慢变好。
ある時、江戸の工事現場ヘ出かけた事がありました。
有一次,他去了江户的施工现场。
主人は大きなノコギリを背負って現れた善六を見ると、ちょっとからかってやろうと思いました。
主人看到背着大锯出现的善六,就想捉弄他一下。
「おい若い衆。一丁ひいてみな。ただし、スミの通りだぞ」
“小师傅、你过来帮我看看这块木头要怎么锯,不要锯坏了。”
そう言って、大きな丸太にスミで波の様な模様(もよう)を描いたのです。
这样说着,在大圆木上画了像波浪一样的花纹。
「はい」
“好的。”
善六は短く返事をすると、たちまち波の様な模様をひき終えました。
善六简短地回答后,马上照着花纹开始锯。
大ノコギリ一つで、これほどの難しい模様をひき切るのは大変な事です。
一个大锯,把这么难的花纹锯断是很辛苦的。
「これは参った。大した腕前だ」
“这可真是服了,真有两下子。”
こうして善六の名は、江戸でも有名になりました。
就这样,善六的名字在江户也很有名。
木びきの仲間たちは、
树木的伙伴们
「善六かよ。ありゃあ、ただの木びきじゃねえ。『大びき』というもんだ。あのくらいのひき手は、広い江戸にも他にあるみゃあよ」
“善六啊。哎呀,这可不是普通的伐木树。这叫‘大伐木工’。那么大的拉手,在广阔的江户也难有敌手。”
と、うわさしたそうです。
这就是是传闻。