「ハリー・ポッターは『名前を呼んではいけないあの人』に勝ったことをおっしゃらない」
「ヴォルデモート」
「あぁ、その名をおっしゃらないで。おっしゃらないで」
ドビーはコウモリのような耳を両手でパチッと覆おおい、呻うめくように言った。
ハリーは慌あわてて「ごめん」と言った。
「その名前を聞きたくない人はいっぱいいるんだよね――僕の友達のロンなんか……」
またそれ以上は続かなかった。ロンのことを考えても胸が疼うずいた。
ドビーはヘッドライトのような目を見開いて、ハリーのほうに身を乗り出してきた。
「ドビーめは聞きました」ドビーの声が嗄かすれていた。「ハリー・ポッターが闇やみの帝てい王おうと二度目の対決を、ほんの数週間前に……。ハリー・ポッターがまたしてもその手を逃のがれたと」
ハリーがうなずくと、ドビーの目が急に涙なみだで光った。
「あぁ」ドビーは着ている汚きたならしい枕まくらカバーの端はしっこを顔に押し当てて涙を拭ぬぐい、感かん嘆たんの声をあげた。
「ハリー・ポッターは勇ゆう猛もう果か敢かん もう何度も危き機きを切り抜けていらっしゃった でも、ドビーめはハリー・ポッターをお護まもりするために参まいりました。警けい告こくしに参りました。あとでオーブンの蓋ふたで耳をバッチンとしなくてはなりませんが、それでも……。ハリー・ポッターはホグワーツに戻もどってはなりません」
一いっ瞬しゅんの静けさ――。階下でナイフやフォークがカチャカチャいう音と、遠い雷らい鳴めいのようにゴロゴロというバーノンおじさんの声が聞こえるだけだった。
“哈利波特不说他战胜那个连名字都不能提的魔头的事迹。”
“伏地魔?”哈利说。
多比用手捂住耳朵,呻吟道:“啊,别说那个名字,先生!别说那个名字!”
“对不起,”哈利马上说,“我知道许多人不喜欢他—— 我的朋友罗恩..”
他又停住了。想到罗恩也让人痛苦。
多比凑近哈利,他的眼睛大得像车灯。
“多比听说,”他嘶哑地说,“哈利波特几星期前又遇见了那个魔头..哈利波特再次逃脱了。”
哈利点了点头。多比顿时热泪盈眶。
“啊,先生,”他抽抽搭搭,用肮脏破烂的枕套角抹了抹脸,“哈利波特英勇无畏!他已经闯过了这么多的险关!可是多比想来保护哈利波特,来给他摄个信,即使多比过后必须把自己的耳朵关在烤箱门里..多比想说,哈利波特不能回霍格沃茨了。”
屋里一片安静,只听见楼下刀叉叮当之声,还有弗农姨父的咕噜声。