ウグイス長者(ちょうじゃ)
仙鸟
むかしむかしの、ある寒い冬の事です。
这是很久以前的一个寒冷的冬天。
お茶売りの男が山道を歩いていると、いつの間にか竹やぶの中にいました。
卖茶的男人走在山路上,走着走着迷路了,不知道怎么走到了竹林里。
「どうやら、道に迷ったらしい」
“好像迷路了。”
男が薄暗い竹やぶをさまよっていると、ふと大きな屋敷の前に出ました。
男子在昏暗的竹林中徘徊时,突然来到了一座大房子前。
「こんな竹やぶの中に、お屋敷とは」
“在这样的竹林里,竟然有宅邸。”
屋敷の庭には季節外れの梅が咲いていて、とても良い香りが漂ってきます。
宅邸的庭院里开着不合季节的梅花,散发着非常好闻的香味。
「ほう、何とも良い香りじゃあ」
“哇,真是好香啊。”
すると突然、若くて美しい四人の娘たちが、梅の木のかげから現れました。
突然,四个年轻貌美的姑娘们从梅树后面出现了。
「あら、珍しい。人間の男の人だわ」
「哎呀,真少见,是人类的男人。」
「どうぞ、家の中にお入りくださいな」
“请进。请到家中坐。”
男は娘たちに案内されるまま、屋敷の中に入って行きました。
男子在女儿们的带领下,走进了房子。
すると屋敷の中から、もう一人の女の人が出て来て言いました。
于是,又有一个女人从房子里出来说:
「わたしは、娘たちの母親です。どうぞ今夜は、泊まって下さいませ」
“我是女儿们的母亲,请今晚留宿。”
そして母親と娘たちは、男をごちそうでもてなしました。
然后母亲和女儿们招待了男人。
次の朝、母親はあらためて男に言いました。
第二天早上,母亲再次对男人说。
「ここは女だけの家で、あなたの様な男の人が現れるのを待っていました。娘は四人おりますから、誰でも好きな娘の婿になって下さいませ」
“这里是只有女人的家,等着像你这样的男人出现。我有四个女儿,请挑一位你喜欢的,做我家的女婿吧。”
男にとっては、夢の様な話です。
对男人来说,这是一个梦幻般的故事。
「わしで良ければ、喜んで」
“如果我可以的话,我会很高兴的。”
こうして男は、長女の婿になりました。
就这样,男子成为了长女的女婿。
やがて冬も終わり、暖かい春がやって来ました。
不久冬天也结束了,温暖的春天来了。
ある日、母親が男に言いました。
有一天,母亲对男人说。
「今日は日よりが良いので、娘たちを連れてお花見に行って来ます。
“今天天气好,我带女儿们去赏花。
すみませんが、留守番をお願いします。
不好意思,请你看家。
もし退屈でしたら、家の倉でも見ていて下さい。
如果无聊的话,可以看看家里的仓库。
きっと、気に入ると思います。
我想你一定会喜欢的。
・・・でも、四つ目の倉だけは、決して開けてはいけませんよ」
但是,只有第四个仓库绝对不能打开。“
「わかった。四つ目は見ないよ」
“好的,我不会看第四个的。”
さて、女たちの出かけた後、男は何もする事がなくてボンヤリとしていました。
那么,女人们出门后,男人没什么事做,只能发呆。
「ひまじゃー。・・・そうじゃ、倉の中でも見てみるか」
“打扰了。这样的话,到仓库里看看吧。”
男はまず、一番目の倉の戸を開けてみました。
男子首先打开第一个仓库的门。
すると、
然后
ザザーーッ。
哗啦哗啦。
と、波が男の足元に押し寄せて来ました。
波浪涌到男人的脚下。
不思議な事に倉の中には、真夏の海が広がっていたのです。
不可思议的是,仓库里有盛夏的大海。
空にはカモメが飛んで、まっ白い砂浜にはカニがいます。
天上飞着海鸥,雪白的沙滩上有螃蟹。
「海は、気持ちがいいのう」
“大海真舒服啊。”
それから男は、二番目の倉を開けてみました。
然后男子打开第二个仓库。
そこには、美しい秋の山がありました。
那里有一座美丽的秋山。
赤や黄色に色づいた木々があり、大きな柿の木にはまっ赤な柿の実がなっています。
有红色和黄色的树木,大柿子树上结着鲜红的柿子果实。
「モミジに柿とは、風流(ふうりゅう)じゃのう」
“枫树和柿子,真是风流啊。”
次に男は、三番目の倉を開けてみました。
接着男子打开第三个仓库。
すると中から、ビューーッと冷たい風が吹いてきました。
于是,从里面吹来了一股冷风。
倉の中は、一面まっ白な雪景色です。
仓库里是一片雪白的雪景。
「うー、寒い、寒い。冬は苦手じゃ」
“嗯,冷,冷。我不喜欢冬天。”
男は寒そうに身を震わせると、四番目の倉へとやって来ました。
男子冷得发抖,来到第四个仓库。
そして戸を開けようとした男は、母親が出がけに言った言葉を思い出しました。
然后正要开门的男子想起了母亲出门时说的话。
『四つ目の倉だけは、決して開けてはいけませんよ』
“只有第四个仓库,绝对不能打开。”
開けてはいけないと言われると、余計に見たくなる物です。
越被说不能打开,就越想看。
「うーん。約束はしたが、ちょっとぐらいなら大丈夫だろう」
“嗯,虽然约好了,但是稍微看一下不要紧吧。”
男は我慢しきれずに、四番目の倉の戸を開けました。
男子忍不住打开了第四个仓库的门。
「ほう、これは見事だ!」
“哇,这太棒了!”
倉の中には、暖かい春が広がっていました。
仓库里蔓延着温暖的春天。
さらさらと流れる小川のほとりには桃色の花が咲いた梅の木があり、梅の木には五羽のウグイスが楽しそうに飛びかっています。
潺潺流淌的小河旁有一棵开着桃色花朵的梅树,梅树上有五只黄莺快乐地飞着。
♪ホーホケキョ
♪ホーホケキョ
ウグイスが、とても美しい声で鳴きました。
黄莺用非常悦耳的声音叫了起来。
「ウグイスじゃあ、きれいじゃなぁ~」
“黄莺真漂亮啊~”
でもウグイスたちは男の姿を見ると、びっくりした様に鳴くのを止めて、どこかへ飛んで行ってしまいました。
但是黄莺们一看到男人的身影,就吓了一跳,停止了鸣叫,不知飞到哪里去了。
それと同時に周りの景色が変わり、男はいつの間にか竹やぶの真ん中に立っていたのです。
与此同时,周围的景色也发生了变化,男子不知什么时候站在竹林的正中间。
「あれ? 倉は? 屋敷は?」
“咦?仓库呢?房子呢?”
男がきょろきょろしていると、どこからともなく母親の声が聞こえて来ました。
男子东张西望,不知从哪里传来了母亲的声音。
「約束を破って、四番目の倉を開けてしまいましたね。
“你违背约定,打开了第四个仓库。
わたしたちは、この竹やぶに住むウグイスです。
我们是住在竹林里的黄莺。
今日は日よりが良いので、みんなで元の姿に戻って遊んでいたのです。
因为今天天气好,所以大家都变回到原来的样子玩了。
あなたとは、いつまでも一緒に暮らそうと思っていました。
我想和你一起生活。
しかし姿を見られたからには、もう一緒に暮らす事は出来ません。
但是既然看到了我们的原形,就不能再一起生活了。
さようなら」
再见。“
「そんな・・・」
“那样的……”
男は仕方なく、一人で山をおりて行きました。
男人没办法,一个人下山去了。