ハリーはおじ、おばとのいざこざを、いまはぜひとも避さけたかった。二人がすでに険けん悪あくなムードになっていたからだ。休きゅう暇かが始まってから一週間目に、魔法使いからの電話がハリーにかかってきたという、たったそれだけの理由で。
ロン・ウィーズリーはホグワーツでのハリーの親友の一人で、家族は全員魔法使いという家いえ柄がらだった。つまり、ロンはハリーの知らないことをたくさん知っていたが、電話というものは使ったことがなかった。バーノンおじさんが電話を受けたのがなんとも不運だった。
「もしもし、バーノン・ダーズリーだが」
ハリーはその時たまたま同じ部屋にいたが、ロンの答える声が聞こえてきた時、身も凍こおる思いがした。
「もし、もし? 聞こえますか? 僕ぼく――ハリー――ポッター――と――話したい――の――ですけど!」
ロンがあまりの大声で叫さけぶので、バーノンおじさんは跳とび上がり、受じゅ話わ器きを耳から三十センチも離はなして持ち、怒いかりと驚おどろきの入り交まじった表情で受話器を見つめた。
「だれだ!」
おじさんは受話器の方向に向かって怒ど鳴なった。
「君はだれかね?」
「ロン――ウィーズリーです!」
ロンも大声を返した。二人はまるでサッカー場の、端はしと端に立って話し合っているようだった。
「僕―ハリー―の―学校―の―友達―です」
バーノンおじさんの小さな目がハリーのほうにぐるりと回った。ハリーはその場に根が生はえたように突っ立っていた。
「ここにはハリー・ポッターなど、おらん!」
怒ど鳴なりながら、受話器が爆ばく発はつするのを恐れるかのように、おじさんは今度は腕うでを伸ばしきって受話器を持っていた。
「何の学校のことやら、わしにはわからん! 二度と連れん絡らくせんでくれ! わしの家族のそばによるな!」
おじさんは毒どくグモを放ほうり投げるかのように、受話器を電話機に投げ戻もどした。
そのあとのやりとりは最悪中の最悪だった。
「よくもこの番号をあんな輩やからに――おまえと同どう類るいの輩に教えたな!」
バーノンおじさんは、ハリーに唾つばをまき散らしながら怒鳴った。