ロンはハリーをトラブルに巻き込こんだと悟さとったらしい。それから一度も電話をかけてこなかった。ホグワーツ校でのもう一人の親友、ハーマイオニー・グレンジャーもまったく連絡してこなかった。ロンがハーマイオニーに電話をかけるなと警けい告こくしたのかもしれない。だとしたら残念だ。ハーマイオニーはハリーの学年で一番の秀しゅう才さいだったが、両親はマグルで、電話の使い方はよく知っていたし、おそらくホグワーツ校の生徒だなんて電話で言ったりしないセンスは持っているはずだ。
そんなわけで、ハリーはもう五週間も魔法界の友達からは何の連絡もなく、今年の夏も去年と同じくらい惨みじめなものになりつつあった。一つだけ去年よりましなのは、ふくろうのヘドウィグのことだ。友達に手紙を出すのにヘドウィグを使わないと誓ちかい、夜だけペットのヘドウィグを自由にしてやれた。バーノンおじさんが折おれたのは、籠かごに閉じ込めっぱなしにするとヘドウィグが大騒ぎをしたからだ。
「変人のウェンデリン」についての箇所かしょを書き終えたハリーは、また耳を澄すませた。暗い家のしじまを破るのは、遠くに聞こえる、巨大ないとこダドリーの、ブーブーといういびきだけだった。もうだいぶ遅い時間に違いない。ハリーは疲れて目がむずがゆくなった。宿題は明日の夜仕上げよう……。
インク瓶びんのふたを閉め、ベッドの下から古い枕カバーを引ひっ張ぱり出して、懐かい中ちゅう電でん灯とうや「魔ま法ほう史し」、それに宿題、羽は根ねペン、インクをその中に入れ、ベッドから出て、ベッド下の床板の緩ゆるんだ場所にその袋ふくろを隠した。それから立ち上がり、伸びをして、ベッドの脇わき机づくえに置いてある夜光やこう時計どけいで時間を確かめた。
午前一時だった。ハリーの胃い袋ぶくろが突とつ然ぜん奇き妙みょうに揺ゆれた。気がつかないうちに、十三歳さいになってからもう一時間も経たっていた。