バーノンおじさんは赤ら顔と同じ色の巨大な拳こぶしでテーブルを叩たたいた。
「あいつらを始末するには絞こう首しゅ刑けいしかないんだ!」
「ほんとにそうだわ」
ペチュニアおばさんは、お隣となりのインゲン豆の蔓つたを透すかすように目を凝こらしながら言った。
バーノンおじさんは残りの茶を飲み干ほし、腕うで時ど計けいをチラッと見た。
「ペチュニア、わしはそろそろ出かけるぞ。マージの汽車は十時着ちゃくだ」
二階にある「箒ほうき磨みがきセット」のことを考えていたハリーは、ガツンといやな衝しょう撃げきとともに現実世界に引き戻もどされた。
「マージおばさん?」ハリーの口から言葉が勝手に飛び出した。
「マ、マージおばさんがここに来る?」
マージおばさんはバーノンおじさんの妹だ。ハリーと血のつながりはなかったが(ハリーの母親はペチュニアの妹だった)、ずっと「おばさん」と呼ぶように言いつけられてきた。マージおばさんは田舎いなかにある大きな庭つきの家に住み、ブルドッグのブリーダーをしていた。大切な犬を放ほうっておくわけにはいかないと、プリベット通りにもそれほど頻ひん繁ぱんに滞たい在ざいするわけではなかったが、その一回一回の恐ろしさが、ありありとハリーの記憶きおくに焼きついていた。
ダドリーの五回目の誕たん生じょう日びに、「動いたら負け」というゲームでダドリーが負けないよう、マージおばさんは杖つえでハリーの向こう脛ずねをバシリと叩たたいて、ハリーを動かした。それから数年後のクリスマスに現れた時は、コンピュータ仕じ掛かけのロボットをダドリーに、犬用ビスケットを一ひと箱はこハリーに持ってきた。前回の訪ほう問もんは、ハリーがホグワーツに入学する一年前だったが、マージおばさんのお気に入りのブルドッグ、リッパーの前まえ脚あしをうっかり踏ふんでしまったハリーは、犬に追いかけられて庭の木の上に追い上げられてしまった。マージおばさんは真夜中過ぎまで犬を呼び戻そうとしなかった。ダドリーはその事件を思い出すたびに、いまでも涙が出るほど笑う。