「マージは一週間ここに泊とまる」バーノンおじさんが歯をむき出した。
「ついでだから言っておこう」おじさんはずんぐりした指を脅おどすようにハリーに突きつけた。「マージを迎えに行く前に、はっきりさせておきたいことがいくつかある」
ダドリーがにんまりしてテレビから視線しせんを離はなした。ハリーが父親に痛めつけられるのを見物するのが、ダドリーお気に入りの娯楽ごらくだった。
「第一に」おじさんは唸うなるように言った。「マージに話すときは、いいか、礼儀れいぎをわきまえた言葉を話すんだぞ」
「いいよ」ハリーは気に入らなかった。「おばさんが僕ぼくに話すときにそうするならね」
「第二に」ハリーの答えを聞かなかったかのように、おじさんは続けた。
「マージはおまえの異常さについては何も知らん。何か――何かキテレツなことは、マージがいる間いっさい起こすな。行ぎょう儀ぎよくしろ。わかったか?」
「そうするよ。おばさんもそうするなら」ハリーは歯を食いしばったまま答えた。
「そして、第三に」
おじさんの卑いやしげな小さな目が、でかい赤ら顔に切れ目を入れたように細くなった。
「マージには、おまえが『セント・ブルータス更こう生せい不能ふのう非行ひこう少しょう年ねん院いん』に収しゅう容ようされていると言ってある」
「なんだって?」ハリーは叫さけんだ。
「おまえは口くち裏うらを合わせるんだ。いいか、小僧こぞう。さもないとひどい目に遭あうぞ」
おじさんは吐はき捨すてるように言った。
ハリーはあまりのことに蒼そう白はくになり、煮にえくり返るような気持で、おじさんを見つめ、座ったまま動けなかった。マージおばさんが一週間も泊とまる。――ダーズリー一家からの誕たん生じょうプレゼントの中でも最悪だ。バーノンおじさんの使い古しの靴くつ下したもひどかったけれど。