「言うじゃないか。続けてごらんよ。親が自慢じまんてわけかい、え? 勝手に車をぶっつけて死んじまったんだ。――どうせ酔よっ払ぱらい運転だったろうさ――」
「自動車事故で死んだんじゃない!」ハリーは思わず立ち上がっていた。
「自動車事故で死んだんだ。性しょう悪わるの嘘うそつき小僧こぞうめ。きちんとした働き者の親しん戚せきに、おまえのような厄やっ介かい者ものを押しつけていったんだ!」
マージおばさんは怒りで膨ふくれ上がりながら叫んだ。
「おまえは礼儀れいぎ知らず、恩おん知らず――」
マージおばさんが突とつ然ぜん黙だまった。一いっ瞬しゅん、言葉に詰つまったように見えた。言葉も出ないほどの怒りで膨れ上がっているように見えた。――しかし、膨れが止まらない。巨大な赤ら顔が膨ぼう張ちょうしはじめ、小さな目は飛び出し、口は左右にギュウと引ひっ張ぱられてしゃべるどころではない。次の瞬しゅん間かん、ツイードの上着のボタンが弾はじけ飛び、ビシッと壁かべを打って落ちた。――マージおばさんは恐ろしくでかい風船のように膨れ上がっていた。ツイードの上着のベルトを乗り越こえて腹が突き出し、指も膨れてサラミ・ソーセージのよう……。
「マージ!」
おじさんとおばさんが同時に叫んだ。マージおばさんの体が椅い子すを離はなれ、天てん井じょうに向かって浮き上がりはじめたのだ。いまやマージおばさんは完全な球きゅう体たいだった。豚ぶたのような目がついた巨大な救きゅう命めいブイさながらに、両手両足を球体から不ぶ気き味みに突き出し、息も絶たえ絶だえにパクパク言いながら、ふわふわ空中に舞まい上がりはじめた。リッパーが転ころがるように部屋に入ってきて、狂ったように吠ほえた。
「やめろおおおおおお!」
おじさんはマージの片足を捕つかまえ、引っ張り下ろそうとしたが、自分のほうが床から持ち上げられそうになった。次の瞬間、リッパーが飛びかかり、おじさんの足にガブリと噛かみついた。
“他们是因为车祸死的,你这个小撒谎精!他们还把你这个负担丢下来,丢给他们体面的、努力工作的亲戚!”玛姬姑妈尖叫道,愤怒得一塌糊涂。“你是个傲慢无礼、不知感激的小—— ”