スタンは「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」を広げ、歯の間から舌した先さきをちょっと突き出して読みはじめた。一いち面めん記き事じに大きな写真があり、もつれた長い髪かみの頬ほおのこけた男が、ハリーを見てゆっくりと瞬まばたきした。なんだか妙みょうに見覚えのある人のような気がした。
「この人!」一いっ瞬しゅん、ハリーは自分の悩なやみを忘れた。「マグルのニュースで見たよ!」
スタンリーが一面記事を見て、クスクス笑った。
「シリウス・ブラックだ」スタンが頷うなずきながら言った。「あたぼうよ。こいつぁマグルのニュースになってらぁ。ネビル、どっか遠いとこでも行ってたか?」
ハリーが呆気にとられているのを見て、スタンはなんとなく得意げなクスクス笑いをしながら、新聞の一面をハリーに渡わたした。
「ネビル、もっと新聞を読まねぇといけねぇよ」
ハリーは新聞を蝋ろう燭そくの明りに掲かかげて読みはじめた。
ブラックいまだ逃とう亡ぼう中ちゅう
魔ま法ほう省しょうが今日発表したところによれば、アズカバンの要よう塞さい監かん獄ごくの囚しゅう人じん中、最も凶きょう悪あくといわれるシリウス・ブラックは、いまだに追つい跡せきの手を逃のがれ逃亡中である。
コーネリウス・ファッジ魔ま法ほう大だい臣じんは、今朝、「我われ々われはブラックの再さい逮たい捕ほに全力であたっている」と語り、魔法界に対し、平へい静せいを保つよう呼びかけた。
ファッジ大臣は、この危き機きをマグルの首相に知らせたことで、国こく際さい魔法まほう戦士せんし連れん盟めいの一部から批判ひはんされている。
大臣は「まあ、はっきり言って、こうするしかなかった。おわかりいただけませんかな」と、いらつき気ぎ味みである。さらに「ブラックは狂っているのですぞ。魔法使いだろうとマグルだろうと、ブラックに逆さからった者は誰でも危険にさらされる。私は、首相閣下かっかから、ブラックの正体は一ひと言ことたりとも誰にも明かさないという確かく約やくをいただいております。それに、なんです――たとえ、口こう外がいしたとしても、誰が信じるというのです?」と語った。
マグルにはブラックが銃じゅう(マグルが殺し合いをするための、金きん属ぞく製せいの杖つえのようなもの)を持っていると伝えてあるが、魔法界は、ブラックがたった一度の呪のろいで十三人も殺した、あの十二年前のような大だい虐ぎゃく殺さつが起きるのではと恐れている。