「それを言うなら、私も嫌いだ……。しかしブラックのような魔法使いが相手では、いやな連れん中ちゅうとも手を組まなければならんこともある」
「看守たちがハリーを救ってくれたなら――」
「そうしたら、私はもう一ひと言こともあの連中の悪口は言わんよ」
ウィーズリー氏が疲れた口く調ちょうで言った。
「母さん、もう遅い。そろそろ休もうか……」
ハリーは椅い子すの動く音を聞いた。できるだけ音をたてずに、ハリーは急いでバーに続く廊下ろうかを進み、その場から姿を隠した。食堂のドアが開き、数秒後に足音がして、ウィーズリー夫妻ふさいが階段を上るのがわかった。
「ネズミ栄えい養ようドリンク」の瓶びんは、午後にみんなが座ったテーブルの下に落ちていた。ハリーはウィーズリー夫妻の部屋のドアが閉まる音が聞こえるまで待った。それから瓶を持って引き返し、二階に戻もどった。
フレッドとジョージが踊おどり場ばの暗がりにうずくまり、声を殺して、息が苦しくなるほど笑っていた。パーシーがバッジを探して、ロンとの二人部屋を引っくり返す大騒ぎを聞いているようだ。
「僕ぼくたちが持ってるのさ」フレッドがハリーに囁ささやいた。「バッジを改かい善ぜんしてやったよ」
バッジには「首しゅ席せき」ではなく「石頭」と書いてあった。
ハリーは無む理りに笑ってみせ、ロンに「ネズミ栄養ドリンク」を渡すと、自分の部屋に戻って鍵かぎを掛かけ、ベッドに横たわった。
シリウス・ブラックは、僕を狙ねらっていたのか。それで謎なぞが解とけた。ファッジは僕が無事だったのを見てほっとしたから甘あまかったんだ。僕がダイアゴン横よこ丁ちょうに留とどまるように約束させたのは、ここなら僕を見守る魔法使いがたくさんいるからだ。明日魔ま法ほう省しょうの車二台で全員を駅まで運ぶのは、汽車に乗るまでウィーズリー一家が僕の面めん倒どうを見ることができるようにするためなんだ。