「大だい丈じょう夫ぶよ、クルックシャンクス」
ハーマイオニーが籠の外から猫撫ねこなで声で呼びかけた。
「汽車に乗ったら出してあげるからね」
「出してあげない」ロンがぴしゃりと言った。
「かわいそうなスキャバーズはどうなる? エ?」
ロンは自分の胸ポケットを指差ゆびさした。ぽっこりと盛もり上がっている。スキャバーズが中で丸くなって縮ちぢこまっているらしい。
外で魔ま法ほう省しょうからの車を待っていたウィーズリー氏が、食堂に首を突き出した。
「車が来たよ。ハリー、おいで」
旧きゅう型がたの深ふか緑みどり色いろの車が二台停てい車しゃしていた。その先頭の車までのわずかな距離きょりを、ウィーズリー氏はハリーにつき添そって歩いた。二台ともエメラルド色のビロードのスーツを着込んだ胡う散さん臭くさい魔法使いが運転していた。
「ハリー、さあ、中へ」
ウィーズリー氏が雑ざっ踏とうの右から左まで素早すばやく目を走らせながら促うながした。
ハリーは後ろの座席ざせきに座った。間もなくハーマイオニーとロンが乗り込こみ、そして、ロンにとってはむかつくパーシーも乗り込んだ。
キングズ・クロス駅までの移動は、ハリーの「夜の騎士ナイトバス」の旅に比べれば、呆気あっけないものだった。魔ま法ほう省しょうの車はほとんどまともといってもよかった。ただ、バーノンおじさんの新しい社しゃ用よう車しゃなら絶ぜっ対たいに通り抜けられないような狭い隙間すきまを、この車がすり抜けられることにハリーは気づいた。キングズ・クロス駅に着いた時は、まだ二十分の余裕よゆうがあった。魔法省の運転手が、カートを探してきて、トランクを車から降おろし、帽子ぼうしにちょっと手をやってウィーズリー氏に向かって挨あい拶さつした。走り去った車は、なぜか信号待ちをしている車の列を飛び越こして、一番前につけていた。