「この人、眠ってるんだよね?」
魔女のおばさんがコンパートメントの引き戸を閉めた時、ロンがこっそり言った。
「つまり……死んでないよね。ね?」
「ない、ない。息をしてるわ」
ハリーがよこしたケーキを取りながら、ハーマイオニーが囁ささやいた。
ルーピン先生は社しゃ交こう的てきな道連みちづれではなかったかもしれないが、コンパートメントにいてくれたことで役に立った。昼下がりになって、車しゃ窓そうから見える丘きゅう陵りょう風景が霞かすむほどの雨が降ふりだした時、通路つうろでまた足音がした。ドアを開けたのは三人が一番毛嫌けぎらいしている連中だった。ドラコ・マルフォイと、その両りょう脇わきに腰こし巾ぎん着ちゃくのビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイルだ。
ドラコ・マルフォイとハリーは、ホグワーツ特急での最初の旅で出会った時からの敵かたき同どう士しだ。顎あごの尖とがった青白い顔に、いつもせせら笑いを浮かべているマルフォイは、スリザリン寮りょう生せいだった。スリザリン寮代表のクィディッチ・チームではシーカーで、ハリーのグリフィンドール寮チームでのポジションと同じだ。クラッブとゴイルは、マルフォイの命令に従うために存在するかのような二人だった。両方とも筋きん肉にく隆りゅう々りゅうの肩かた幅はばガッチリ体たい型けいで、クラッブのほうが背が高く、鍋なべ底ぞこカットのヘアスタイルで太い首。ゴイルはたわしのような短く刈かり込こんだ髪かみで、長いゴリラのような腕うでをぶら下げていた。
「へえ、誰かと思えば」
コンパートメントのドアを開けながら、マルフォイはいつもの気取った口く調ちょうで言った。
「ポッター、ポッティーのいかれポンチと、ウィーズリー、ウィーゼルのコソコソ君じゃあないか!」
クラッブとゴイルはトロール並みのアホ笑いをした。