ハリーが降りる時、気取った、いかにもうれしそうな声が聞こえてきた。
「ポッター、気絶きぜつしたんだって? ロングボトムは本当のことを言ってるのかな? 本当に気絶なんかしたのかい?」
マルフォイは肘ひじでハーマイオニーを押しのけ、ハリーと城への石段との間に立ちはだかった。喜びに顔を輝かがやかせ、薄うす青あおい目が意い地じ悪わるに光っている。
「失うせろ、マルフォイ」ロンは歯を食いしばっていた。
「ウィーズリー、君も気絶したのか?」マルフォイは大声で言った。「あのこわーい吸魂鬼ディメンターで、ウィーズリー、君も縮み上がったのかい?」
「どうしたんだい?」
穏おだやかな声がした。ルーピン先生が次の馬車から降おりてきたところだった。
マルフォイは横おう柄へいな目つきでルーピン先生をじろじろ見た。その目でローブの継つぎはぎや、ボロボロのカバンを眺ながめ回した。
「いいえ、何も――えーと――先生」
マルフォイの声に微かすかに皮肉ひにくが込こめられていた。クラッブとゴイルに向かってにんまり笑い、マルフォイは二人を引き連れて城への石段を上った。
ハーマイオニーがロンの背中を突ついて急がせた。生徒の群むらがる石段を、三人は群れに混まじって上がり、正面玄げん関かんの巨大な樫かしの扉とびらを通り、広々とした玄げん関かんホールに入った。そこは松明たいまつで明あか々あかと照らされ、上階に通ずる壮そう大だいな大だい理り石せきの階段があった。
右のほうに大おお広ひろ間まへの扉が開いていた。ハリーは群れの流れについて中に入った。大広間の天てん井じょうは、魔法で今日の夜空と同じ雲の多い真っ暗な空に変えられていたが、それをひと目見る間もなく、誰かに名前を呼ばれた。
「ポッター! グレンジャー! 二人とも私わたくしのところにおいでなさい!」