この思いもかけない宣せん告こくに、誰一人返す言葉もなかった。トレローニー先生はたおやかにショールをかけ直し、話を続けた。
「みなさまがお選びになったのは、『占い学』。魔法の学問の中でも一番難しいものですわ。はじめにお断ことわりしておきましょう。『眼がん力りき』の備そなわっていない方には、あたくしがお教えできることはほとんどありませんのよ。この学問では、書物はあるところまでしか教えてくれませんの……」
この言葉で、ハリーとロンがニヤッとして、同時にハーマイオニーをチラッと見た。書物がこの学科にあまり役に立たないと聞いて、ハーマイオニーはひどく驚いていた。
「いかに優すぐれた魔法使いや魔女たりとも、派は手でな音や匂においに優れ、雲くも隠がくれ術に長たけていても、未来の神秘しんぴの帳とばりを見み透すかすことはできません」
巨大な目できらり、きらりと生徒たちの不安そうな顔を一人ひとり見ながら、トレローニー先生は話を続けた。
「かぎられたものだけに与えられる、『天てん分ぶん』とも言えましょう。あなた、そこの男の子」
先生に突然話しかけられて、ネビルは長椅子から転ころげ落ちそうになった。
「あなたのおばあさまはお元気?」
「元気だと思います」ネビルは不安にかられたようだった。
「あたくしがあなたの立場だったら、そんなに自信ありげな言い方はできませんことよ」
暖炉だんろの火が、先生の長いエメラルドのイヤリングを輝かがやかせた。ネビルがゴクリと唾つばを飲んだ。トレローニー先生は穏おだやかに続けた。
「一年間、占うらないの基本的な方法をお勉強いたしましょう。今学期はお茶の葉を読むことに専せん念ねんいたします。来学期は手て相そう学がくに進みましょう。ところで、あなた」
先生は急にパーバティ・パチルを見み据すえた。
「赤毛の男子にお気をつけあそばせ」