「今日の授じゅ業ぎょうはここまでにいたしましょう」
トレローニー先生が一段と霧きりのかなたのような声で言った。
「そう……どうぞお片づけなさってね……」
みんな押し黙だまってカップをトレローニー先生に返し、教科書をまとめ、カバンを閉じた。ロンまでがハリーの目を避さけていた。
「またお会いする時まで」トレローニー先生が消え入るような声で言った。
「みなさまが幸運でありますよう。ああ、あなた――」先生はネビルを指差ゆびさした。「あなたは次の授業に遅れるでしょう。ですから授業についていけるよう、とくによくお勉強なさいね」
ハリー、ロン、ハーマイオニーは無言でトレローニー先生の梯子はしごを下り、曲がりくねった階段を下り、マクゴナガル先生の「変へん身しん術じゅつ」のクラスに向かった。マクゴナガル先生の教室を探し当てるのにずいぶん時間がかかり、「占うらない術じゅつ」のクラスを早く出たわりには、ぎりぎりだった。
ハリーは教室の一番後ろの席を選んだが、それでも眩まぶしいスポットライトにさらされているような気がした。クラス中がまるでハリーがいつ何なん時どきばったり死ぬかわからないと言わんばかりに、ハリーをちらりちらりと盗ぬすみ見ていた。マクゴナガル先生が「動物もどきアニメーガス(自由に動物に変身できる魔法使い)」について話しているのもほとんど耳に入らなかった。先生がみんなの目の前で、目の周まわりにメガネと同じ形の縞しまがあるトラ猫に変身したのを見てもいなかった。
「まったく、今日はみんなどうしたんですか?」
マクゴナガル先生はポンという軽い音とともに元の姿に戻もどるなり、クラス中を見回した。
「別にかまいませんが、私わたくしの変身がクラスの拍はく手しゅを浴あびなかったのはこれが初めてです」
みんながいっせいにハリーのほうを振り向いたが、誰もしゃべらない。するとハーマイオニーが手を挙あげた。
「先生、私たち、『占うらない学がく』の最初のクラスを受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで――」
「ああ、そういうことですか」マクゴナガル先生は顔をしかめた。
「ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結けっ構こうです。今年はいったい誰が死ぬことになったのですか?」
みんないっせいに先生を見つめた。