ハリーの成功に励はげまされ、他の生徒も恐こわ々ごわ放ほう牧ぼく場じょうに入ってきた。ハグリッドは一頭ずつヒッポグリフを解とき放はなち、やがて放牧場のあちこちで、みんながおずおずとお辞じ儀ぎを始めた。ネビルのヒッポグリフは膝ひざを折おろうとしなかったので、ネビルは何度も慌あわてて逃げた。ロンとハーマイオニーは、ハリーが見ているところで栗毛くりげのヒッポグリフで練習した。
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、ハリーのあとにバックビークに向かった。バックビークがお辞儀したので、マルフォイは尊そん大だいな態度でその嘴くちばしを撫なでていた。
「簡単じゃぁないか」
もったいぶって、わざとハリーに聞こえるようにマルフォイが言った。
「ポッターにできるんだ、簡単に違いないと思ったよ。……おまえ、全然危険きけんなんかじゃないなぁ?」
マルフォイはヒッポグリフに話しかけた。
「そうだろう? 醜みにくいデカブツの野や獣じゅう君」
一いっ瞬しゅん、鋼はがね色いろの鉤かぎ爪づめが光った。マルフォイがヒッーと悲鳴ひめいをあげ、次の瞬しゅん間かんハグリッドがバックビークに首輪くびわをつけようと格かく闘とうしていた。バックビークはマルフォイを襲おそおうともがき、マルフォイのほうはローブが見る見る血に染そまり、草の上で身を丸めていた。
「死んじゃう!」マルフォイが喚わめいた。クラス中がパニックに陥おちいっていた。
「僕ぼく、死んじゃう。見てよ! あいつ、僕を殺した!」
「死にゃせん!」ハグリッドは蒼そう白はくになっていた。
「誰か、手伝ってくれ。――この子をこっから連れ出さにゃー」
ハグリッドがマルフォイを軽々と抱かかえ上げ、ハーマイオニーが走っていってゲートを開けた。マルフォイの腕うでに深々と長い裂さけ目があるのをハリーは見た。血が草地に点々と飛び散った。ハグリッドはマルフォイを抱え、城に向かって坂を駆かけ上がっていった。
「魔法まほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」の生徒たちは大ショックを受けてそのあとをついていった。スリザリン生は全員ハグリッドを罵倒ばとうしていた。
「すぐクビにすべきよ!」パンジー・パーキンソンが泣きながら言った。
「マルフォイが悪いんだ!」ディーン・トーマスがきっぱり言った。
クラッブとゴイルが脅おどすように力ちから瘤こぶを作って腕うでを曲げ伸ばしした。
石段を上り、全員ががらんとした玄げん関かんホールに入った。