「明日のいまごろには、親たちからのふくろう便びんが届きはじめるだろう。――ハリー、誰も自分の子供が、狼人間に教えを受けることなんて望まないんだよ。それに、昨夜さくやのことがあって、私も、そのとおりだと思う。誰か君たちを噛かんでいたかもしれないんだ。……こんなことは二度と起こってはならない」
「先生は、いままでで最高の『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の先生です! 行かないでください」
ルーピンは首を振り、何も言わなかった。そして引き出しの中を片づけ続けた。ハリーが、どう説せっ得とくしたらルーピンを引き止められるかと、あれこれ考えていると、ルーピンが言った。
「校長先生が今朝、私に話してくれた。ハリー、君は昨夜、ずいぶん多くの命を救ったそうだね。私に誇ほこれることがあるとすれば、それは、君が、それほど多くを学んでくれたということだ。君の守護霊パトローナスのことを話しておくれ」
「どうしてそれをご存知ぞんじなんですか?」ハリーは気を逸そらされた。
「それ以外、吸魂鬼ディメンターを追い払えるものがあるかい?」
何が起こったのか、ハリーはルーピンに話した。話し終えた時、ルーピンがまた微笑ほほえんだ。
「そうだ。君のお父さんは、いつも牡鹿おじかに変身した。君の推すい測そくどおりだ……だから私たちはプロングズと呼んでいたんだよ」
ルーピンは最後の数冊の本をスーツケースに放ほうり込こみ、引き出しを閉め、ハリーのほうに向き直った。
「さあ――昨夜『叫さけびの屋敷やしき』から、これを持ってきた」ルーピンはそう言うと、ハリーに「透とう明めいマント」を返した。「それと……」ちょっとためらってから、ルーピンは「忍しのびの地ち図ず」もさし出した。
「私はもう、君の先生ではない。だから、これを君に返しても別に後ろめたい気持はない。私には何の役にも立たないものだ。それに、君とロンとハーマイオニーなら、使い道を見つけることだろう」
ハリーは地図を受け取ってにっこりした。