フランクの目の前に、鼻の尖とがった、色の薄うすい小さい目をした白はく髪はつ混まじりの禿はげた小男が、恐れと驚きの入り交まじった表情で立っていた。
「中にお招まねきするのだ。ワームテールよ。礼れい儀ぎを知らぬのか?」
冷たい声は暖だん炉ろ前の古めかしい肘ひじ掛かけ椅い子すから聞こえていたが、声の主は見えなかった。蛇は、朽くちかけた暖炉マットにとぐろを巻いてうずくまり、まるで恐ろしい姿のペット犬のようだった。
ワームテールは部屋に入るようにとフランクに合図した。ショックを受けてはいたが、フランクは杖をしっかり握り直し、足を引きずりながら敷しき居いを跨またいだ。
部屋の明かりは暖炉の火だけだった。その灯ひが壁かべに蜘く蛛ものような影を長く投げかけている。フランクは肘掛椅子の背を見つめたが、男の後頭部さえ見えなかった。座っている男は、召めし使つかいの小男より小さいに違いない。
「マグルよ。すべて聞いたのだな?」冷たい声が言った。
「俺おれのことをなんと呼んだ?」
フランクは食ってかかった。もう部屋の中に入ってしまった以上、何かしなければならない。フランクは大だい胆たんになっていた。戦争でもいつもそうだった。
「おまえをマグルと呼んだ」声が冷たく言い放った。「つまりおまえは魔法使いではないということだ」
「おまえ様が、魔法使いと言いなさる意味がわからねえ」
フランクの声がますますしっかりしてきた。
「ただ、俺は、今晩警察の気を引くのに十分のことを聞かせてもらった。ああ、聞いたとも。おまえ様は人殺しをした。しかもまだ殺すつもりだ! それに、言っとくが」
フランクは急に思いついたことを言った。
「かみさんは、俺がここに来たことを知ってるぞ。もし俺が戻らなかったら――」
「おまえに妻はいない」冷たい声は落ち着き払っていた。
「おまえがここにいることは誰も知らぬ。ここに来ることを、おまえは誰にも言っていない。ヴォルデモート卿きょうに嘘うそをつくな。マグルよ。俺おれ様さまにはお見通しだ……すべてが……」
「へえ?」フランクはぶっきらぼうに言った。
「『卿』だって? はて、卿にしちゃ礼儀をわきまえていなさらん。こっちを向いて、一人前の男らしく俺と向き合ったらどうだ。できないのか?」
「マグルよ。俺おれ様さまは人ではない」
冷たい声は、暖だん炉ろの火の弾はじける音でほとんど聞き取れないほどだった。
「人よりずっと上の存在なのだ。しかし……よかろう。おまえと向き合おう……ワームテール、ここに来て、この椅子を回すのだ」
召めし使つかいはヒーッと声を上げた。
「ワームテール、聞こえたのか」