そう、それこそハーマイオニーらしい忠告ちゅうこくだ。すぐホグワーツの校長のところに行くこと、その間に本で調べること。ハリーは窓から群ぐん青じょう色いろに塗ぬり込められた空を見つめた。この場合、本が役に立つとはとうてい思えなかった。ハリーの知るかぎり、ヴォルデモートの呪のろいほどのものを受けて生き残ったのは、自分一人だけだ。つまり、ハリーの症しょう状じょうが、「よくある魔ま法ほう病びょうと傷害しょうがい」に載のっているとはほとんど考えられない。校長先生に知らせるといっても、ダンブルドアが夏休みをどこで過ごしているのか、ハリーには見当もつかない。長い銀色の鬚ひげを蓄たくわえたダンブルドアが、例の踵かかとまで届く丈たけ長ながのローブを着て三さん角かく帽ぼう子しをかぶり、どこかのビーチに寝そべって、例の曲がった鼻に日焼けクリームを塗り込んでいる姿を一瞬いっしゅん想像して、ハリーはおかしくなった。ダンブルドアがどこにいようとも、ハリーのペットふくろうのヘドウィグはきっと見つけるに違いない。たとえ住所がわからなくても、ヘドウィグはいままで一度も手紙を届け損そこなったことはない。でも、何と書けばいいんだろう?
ダンブルドア先生
休きゅう暇か中ちゅうにお邪じゃ魔ましてすみません。でも今朝傷きず痕あとが疼うずいたのです。
さようなら
ハリー・ポッター
頭の中で考えただけでも、こんな文句はばかげている。
ハリーはもう一人の親友、ロン・ウィーズリーがどんな反応を示すか想像してみた。そばかすだらけの、鼻の高いロンの顔が、フゥーッと目の前に現れた。当とう惑わくした表情だ。
「傷が痛いって? だけど……だけど『例れいのあの人』がいま君のそばにいるわけないよ。そうだろ? だって……もしいるなら、君、わかるはずだろ? また君を殺そうとするはずだろ? ハリー、僕、わかんないけど、呪いの傷痕って、いつでも少しはズキズキするものなんじゃないかなぁ……パパに聞いてみるよ……」