バーノンおじさんは、まるでハリーが汚きたならしい罵ののしりの言葉でも吐いたかのように、カンカンになった。怒りで震ふるえながら、おじさんは神経を尖とがらせて窓の外を見た。まるで隣となり近所が窓ガラスに耳を押しつけて聞いていると思っているかのようだった。
「何度言ったらわかるんだ? この屋根の下で『不自然なこと』を口にするな」
赤ら顔を紫むらさきにして、おじさんが凄すごんだ。
「恩おん知らずめが。わしとペチュニアのお陰で、そんなふうに服を着ていられるものを――」
「ダドリーが着き古ふるしたあとにだけどね」ハリーは冷たく言った。
まさに、お下さがりのコットンシャツは、大きすぎて、袖そでを五つ折おりにしてたくし上げないと手が使えなかったし、シャツの丈たけはぶかぶかなジーンズの膝ひざ下まであった。
「わしに向かってその口のききようはなんだ!」おじさんは怒り狂って震えていた。
しかしハリーは引っ込まなかった。ダーズリー家のばかばかしい規則を、一つ残らず守らなければならなかったのはもう昔のことだ。ハリーはダーズリー一家のダイエットに従ってはいなかったし、バーノンおじさんがクィディッチ・ワールドカップに行かせまいとしても、そうはさせないつもりだった。うまく抵抗できればの話だが。
ハリーは深く息を吸って気持を落ち着けた。
「じゃ、僕、ワールドカップを見にいけないんだ。もう行ってもいいですか? シリウスに書いてる手紙を書き終えなきゃ。ほら――僕の名な付づけ親おや」
やったぞ。殺し文句を言ってやった。バーノンおじさんの顔から紫むらさき色いろがブチになって消えていくのが見えた。まるで混まぜ損そこなったクロスグリ・アイスクリーム状態だ。
「おまえ――おまえはヤツに手紙を書いているのか?」
おじさんの声は平静を装よそおっていた――しかし、ハリーは、もともと小さいおじさんの瞳ひとみが、恐怖でもっと縮ちぢんだのを見た。
「ウン――まあね」ハリーはさりげなく言った。
「もうずいぶん長いこと手紙を出してなかったから。それに、僕からの便たよりがないと、ほら、何か悪いことが起こったんじゃないかって心配するかもしれないし」