ハリーはここで言葉を切り、言葉の効果を楽しんだ。きっちり分け目をつけたバーノンおじさんのたっぷりした黒い髪かみの下で、歯車がどう回っているのかが見えるようだった。シリウスに手紙を書くのをやめさせれば、シリウスはハリーが虐待ぎゃくたいされていると思うだろう。クィディッチ・ワールドカップに行ってはならんと言えば、ハリーは手紙にそれを書き、ハリーが虐待されていることをシリウスが知ってしまう。バーノンおじさんの採るべき道はただ一つだ。巨大な口くち髭ひげのついた頭の中が透すけて見えるかのように、ハリーにはおじさんの頭にその結けつ論ろんができ上がっていくのが見えるようだった。ハリーはニンマリしないよう、なるべく無表情でいるよう努力した。すると――。
「まあ、よかろう。そのいまいましい……そのバカバカしい……そのワールドカップとやらに行ってよい。手紙を書いてこの連中――このウィーズリーとかに、迎えにくるように言え。いいか。わしはおまえをどこへやらわからんところへ連れていく暇ひまはない。それから、夏休みはあとずっとそこで過ごしてよろしい。それから、おまえの――おまえの名付け親に……そやつに言うんだな……おまえが行くことになったと、言うんだぞ」
「オッケーだよ」ハリーは朗ほがらかに言った。
ハリーは居い間まの入口のほうに向き直り、飛び上がって「ヤッタ!」と叫さけびたいのをこらえながら歩き出した。行けるんだ……ウィーズリーのところに行けるんだ。クィディッチ・ワールドカップに行けるんだ!
廊ろう下かに出ると、ダドリーにぶつかりそうになった。ドアの陰に潜ひそんで、ハリーが叱しかられるのを盗ぬすみ聞きしようとしていたに違いない。ハリーがニッコリ笑っているのを見て、ダドリーはショックを受けたようだった。
「すばらしい朝食だったね? 僕、満腹さ。君は?」ハリーが言った。