ハリーはメモ書きを小さく畳たたみ、豆ふくろうの脚に括くくりつけたが、興こう奮ふんしてピョンピョン飛び上がるものだから、結ぶのがひと苦労だった。メモがきっちり括りつけられると、豆ふくろうは出発した。窓からブーンと飛び出し、姿が見えなくなった。
ハリーはヘドウィグのところに行った。
「長なが旅たびできるかい?」
ヘドウィグは威い厳げんたっぷりにホーと鳴いた。
「これをシリウスに届けられるね?」ハリーは手紙を取り上げた。
「ちょっと待って……一ひと言こと書き加えるから」
羊皮紙をもう一度広げ、ハリーは急いで追つい伸しんを書いた。
僕に連れん絡らくしたいときは、これから夏休み中ずっと、友達のロン・ウィーズリーのところにいます。ロンのパパがクィディッチ・ワールドカップの切符を手に入れてくれたんだ!
書き終えた手紙を、ハリーはヘドウィグの脚に括りつけた。ヘドウィグはいつにも増してじっとしていた。本物の「郵ゆう便びん配はい達たつふくろう」がどう振ふる舞まうべきかを、ハリーにしっかり見せてやろうとしているようだった。
「君が戻るころ、僕、ロンのところにいるから。わかったね?」
ヘドウィグは愛情を込めてハリーの指を噛かみ、柔やわらかいシュッという羽は音おとをさせて大きな翼つばさを広げ、開け放った窓から高々と飛び立っていった。
ハリーはヘドウィグの姿が見えなくなるまで見送り、それからベッド下に這はい込んで、緩ゆるんだ床板をこじ開け、バースデー・ケーキの大きな塊かたまりを引っ張り出した。床に座ってそれを食べながら、ハリーは幸福感がひたひたと溢あふれてくるのを味わった。ハリーにはケーキがある。ダドリーにはグレープフルーツしかない。明るい夏の日だ。明日にはプリベット通りを離れる。傷きず痕あとはもう何ともない。それに、クィディッチ・ワールドカップを見にいくのだ。
いまは、何かを心配しろというほうが無理だ――たとえ、ヴォルデモート卿きょうのことだって。