翌日十二時までには、学用品やらその他いちばん大切な持ち物が全部、ハリーのトランクに詰め込まれた。――父親から譲ゆずり受けた「透とう明めいマント」やシリウスにもらった箒ほうき、去年、ウィーズリー兄弟のフレッドとジョージからもらったホグワーツ校の「忍しのびの地ち図ず」などだ。緩ゆるんだ床板の下の隠し場所から食べ物を全部出して空からっぽにし、呪じゅ文もん集しゅうや羽根ペンを忘れていないか部屋の隅すみ々ずみまで念ねん入いりに調べ、九月一日までの日にちを数えていた壁かべの表もはがした。ホグワーツに帰る日まで、表の日付けに毎日×印をつけるのがハリーには楽しみだった。
プリベット通り四番地には極きょく度どに緊張きんちょうした空気がみなぎっていた。魔法使いの一いっ行こうがまもなくこの家にやってくるというので、ダーズリー一家はガチガチに緊張し、イライラしていた。ウィーズリー一家が日曜の五時にやってくるとハリーが知らせたとき、バーノンおじさんは間違いなく度ど胆ぎもを抜かれた。
「きちんとした身なりで来るように言ってやったろうな。連中に」
おじさんはすぐさま歯はをむき出して怒ど鳴なった。
「おまえの仲間の服ふく装そうを、わしは見たことがある。まともな服を着てくるぐらいの礼れい儀ぎは持ち合わせたほうがいいぞ。それだけだ」
ハリーはちらりと不ふ吉きつな予感がした。ウィーズリー夫妻が、ダーズリー一家が「まとも」と呼ぶような格かっ好こうをしているのを見たことがない。子供たちは、休み中はマグルの服を着ることもあるが、ウィーズリー夫妻はよれよれの度合いこそ違え、いつも長いローブを着ていた。隣となり近所が何と思おうと、ハリーは気にならなかった。ただ、もしウィーズリー一家がダーズリーたちが持つ「魔法使い」の最悪のイメージそのものの姿で現れたら、ダーズリーたちがどんなに失礼な態度を取るかと思うと心配だった。
第4章 回到陋居