ハリーは飛び上がった。居い間まのドアの向こう側で、ダーズリー一家三人がパニックして、部屋の隅すみに逃げ込む音が聞こえる。次の瞬間しゅんかん、ダドリーが恐怖で引きつった顔をして廊ろう下かに飛び出てきた。
「どうした? 何が起こったんだ?」ハリーが聞いた。
しかし、ダドリーは口もきけない様子だ。両手でぴったり尻しりをガードしたまま、ダドリーはドタドタと、それなりに急いでキッチンに駆かけ込んだ。ハリーは急いで居間に入った。
板を打ちつけて塞ふさいだ暖だん炉ろの中から、バンバン叩たたいたり、ガリガリ擦こすったり、大きな音がしていた。暖炉の前には、石炭を積み上げた形をした電気ストーブが置いてあるのだ。
「あれは何なの?」
ペチュニアおばさんは後あと退ずさりして壁かべに張はりつき、恐こわ々ごわ暖炉を見つめ、喘あえぎながら言った。
「バーノン、何なの?」
二人の疑問は、一秒も経たたないうちに解けた。塞がれた暖炉の中から声が聞こえてきた。
「イタッ! だめだ、フレッド――戻って、戻って。何か手違いがあった――ジョージに、だめだって言いなさい――痛い! ジョージ、だめだ。場所がない。早く戻って、ロンに言いなさい――」
「パパ、ハリーには聞こえてるかもしれないよ――ハリーが、ここから出してくれるかもしれない――」電気ストーブの後ろから、板をドンドンとこぶしで叩く大きな音がした。
「ハリー? 聞こえるかい? ハリー?」
ダーズリー夫妻が、怒り狂ったクズリのつがいのごとくハリーのほうを振り向いた。
「これは何だ?」おじさんが唸うなった。「何事なんだ?」
「みんなが――煙突飛行粉フルーパウダーでここに来ようとしたんだ」ハリーは吹き出しそうになるのをグッとこらえた。「みんなは暖炉の火を使って移動できるんだ。――でも、この暖炉は塞がれてるから――ちょっと待って――」
ハリーは暖炉に近づき、打ちつけた板越しに声をかけた。