賭かけてもいい、ダーズリー夫婦には、一言もわからなかったに違いない、とハリーは思った。二人は雷に打たれたように、あんぐり大口を開け、ウィーズリー氏を見つめたままだった。ペチュニアおばさんはよろよろと立ち上がり、おじさんの陰に隠れた。
「やあ、ハリー!」ウィーズリー氏が朗ほがらかに声をかけた。「トランクは準備できているかね?」
「二階にあります」ハリーもニッコリした。
「俺おれたちが取ってくる」そう言うなり、フレッドはハリーにウィンクし、ジョージと一いっ緒しょに部屋を出ていった。一度、真ま夜よ中なかにハリーを救い出したことがあるので、二人はハリーの部屋がどこにあるのかを知っていた。たぶん、二人ともダドリーを――ハリーからいろいろ話を聞いていたダドリーを――一目見たくて出ていったのだろうと、ハリーはそう思った。
「さーて」ウィーズリー氏は、何とも気まずい沈ちん黙もくを破る言葉を探して、腕を少しブラブラさせながら言った。
「なかなか――エヘン――なかなかいいお住まいですな」
いつもはシミ一つない居い間まが、埃ほこりとレンガのかけらで埋うまっているいま、ダーズリー夫婦にはこの科白せりふがすんなり納なっ得とくできはしない。バーノンおじさんの顔にまた血が上り、ペチュニアおばさんは口の中で舌をゴニョゴニョやりはじめた。それでも怖こわくて何も言えないようだった。
ウィーズリー氏はあたりを見回した。マグルに関するものは何でも大好きなのだ。テレビとビデオのそばに行って調べてみたくてむずむずしているのが、ハリーにはわかった。
「みんな『気電』で動くのでしょうな?」ウィーズリー氏が知ったかぶりをした。
「ああ、やっぱり。プラグがある。私はプラグを集めていましてね」
ウィーズリー氏はおじさんに向かってそうつけ加えた。
「それに電池も。電池のコレクションは相当なものでして。妻つまなどは私がどうかしてると思ってるらしいのですがね。でもこればっかりは」