「ほんとうに、大だい丈じょう夫ぶですから!」ウィーズリー氏は困り果てて言った。
「簡単な処しょ理りですよ――ヌガーなんです――息子のフレッドが――しょうのないやんちゃ者で――しかし、単純たんじゅんな『肥ふとらせ術じゅつ』です――まあ、私はそうじゃないかと……どうかお願いです。元に戻もどせますから――」
ダーズリー一家はそれで納なっ得とくするどころか、ますますパニック状態に陥おちいった。おばさんはヒステリーを起こして、泣き喚きながらダドリーの舌をちぎり取ろうとがむしゃらに引っ張り、ダドリーは母親と自分の舌の重みで窒ちっ息そくしそうになり、おじさんは完全にキレて、サイドボードの上にあった陶とう器きの置物をひっつかみ、ウィーズリー氏めがけて力まかせに投げつけた。ウィーズリー氏が身をかわしたので、陶器は爆ばく破はされた暖だん炉ろにぶつかって粉こな々ごなになった。
「まったく!」ウィーズリー氏は怒って杖を振り回した。「私は助けようとしているのに!」
手て負おいのカバのように唸うなり声を上げ、バーノンおじさんがまた別の置物を引っつかんだ。
「ハリー、行きなさい! いいから早く!」杖つえをバーノンおじさんに向けたまま、ウィーズリー氏が叫んだ。「私が何とかするから!」
こんなおもしろいものを見み逃のがしたくはなかったが、バーノンおじさんの投げた二つ目の置物が耳みみ元もとをかすめたし、結局はウィーズリーおじさんに任まかせるのがいちばんよいとハリーは思った。火に足を踏ふみ入れ、「隠かくれ穴あな!」と叫さけびながら後ろを振り返ると、居い間まの最後の様子がちらりと見えた。バーノンおじさんがつかんでいた三つ目の置物を、ウィーズリー氏が杖で吹き飛ばし、ペチュニアおばさんはダドリーに覆おおい被かぶさって悲ひ鳴めいを上げ、ダドリーの舌はヌメヌメしたニシキヘビのようにのたくっていた。次の瞬間しゅんかん、ハリーは急きゅう旋せん回かいを始めた。エメラルド色の炎ほのおが勢いきおいよく燃え上がり、そして、ダーズリー家の居間はさっと視し界かいから消えていった。