「それから大だい論ろん争そうがあったの」ジニーが続けた。「ママは、二人にパパみたいに『魔ま法ほう省しょう』に入ってほしかったの。でも二人はどうしても『悪いた戯ずら専せん門もん店てん』を開きたいって、ママに言ったの」
ちょうどそのとき、二つ目の踊おどり場のドアが開き、角つの縁ぶちメガネをかけて、迷めい惑わく千せん万ばんという顔がひょこっと飛び出した。
「やあ、パーシー」ハリーが挨あい拶さつした。
「ああ、しばらく、ハリー」パーシーが言った。
「誰がうるさく騒いでいるのかと思ってね。僕、ほら、ここで仕事中なんだ――役所の仕事で報告書を仕上げなくちゃならない。――階段でドスンドスンされたんじゃ、集中しにくくってかなわない」
「ドスンドスンなんかしてないぞ」ロンがイライラした。「僕たち、歩いてるだけだ。すみませんね。魔ま法ほう省しょう極ごく秘ひのお仕事のお邪じゃ魔まをいたしまして」
「何の仕事なの?」ハリーが聞いた。
「『国こく際さい魔ま法ほう協きょう力りょく部ぶ』の報告書でね」パーシーが気取って言った。「大おお鍋なべの厚さを標ひょう準じゅん化かしようとしてるんだ。輸入品にはわずかに薄うすいのがあってね――漏もれ率りつが年間約三パーセント増えてるんだ――」
「世界がひっくり返るよ。その報告書で」ロンが言った。「『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』の一面記事だ。きっと。『鍋が漏る』って」
パーシーの顔に少し血が上った。
「ロン、おまえはばかにするかもしれないが」パーシーが熱っぽく言った。「何らかの国こく際さい法ほうを科かさないと、いまに市場はペラペラの底の薄うすい製品で溢あふれ、深しん刻こくな危険が――」
「はい、はい、わかったよ」
ロンはそう言うとまた階段を上がりはじめた。パーシーは部屋のドアをバタンと閉めた。ハリー、ハーマイオニー、ジニーがロンのあとについて、そこからまた三階上まで階段を上がっていくと、下のキッチンからガミガミ怒ど鳴なる声が上まで響ひびいてきた。ウィーズリーおじさんがおばさんに「ベロベロ飴トン・タン・タフィー」の一いっ件けんを話してしまったらしい。