ピッグウィジョンは籠の中で甲かん高だかくホッホッと鳴きながら、うれしそうに飛び回っていた。ハリーはロンの言葉を真まに受けはしなかった。ロンのことはよく知っている。老ネズミのスキャバーズのこともしょっちゅうボロクソに言っていたくせに、ハーマイオニーの猫、クルックシャンクスがスキャバーズを食ってしまったと思ったときには、ロンがどんなに嘆なげいたか。
「クルックシャンクスは?」ハリーはこんどはハーマイオニーに聞いた。
「庭だと思うわ。庭にわ小こ人びとを追いかけるのが好きなのよ。初めて見たものだから」
「パーシーは、それじゃ、仕事が楽しいんだね?」
ベッドに腰かけ、チャドリー・キャノンズが天井のポスターから出たり入ったりするのを眺ながめながら、ハリーが言った。
「楽しいかだって?」ロンは憂ゆう鬱うつそうに言った。「パパに帰れとでも言われなきゃ、パーシーは家に帰らないと思うな。ほとんど病気だね。パーシーのボスのことには触ふれるなよ。クラウチ氏によれば……クラウチさんに僕が申し上げたように……クラウチ氏の意見では……クラウチさんが僕におっしゃるには……きっとこの二人、近いうちに婚こん約やく発表するぜ」
「ハリー、あなたのほうは、夏休みはどうだったの?」ハーマイオニーが聞いた。
「私たちからの食べ物の小こ包づつみとか、いろいろ届いた?」
「うん、ありがとう。ほんとに命拾いした。ケーキのお陰で」
「それに、便たよりはあるのかい? ほら――」
ハーマイオニーの顔を見て、ロンは言葉を切り、黙だまり込んだ。ロンがシリウスのことを聞きたかったのだと、ハリーにはわかった。ロンもハーマイオニーもシリウスが魔ま法ほう省しょうの手を逃のがれるのにずいぶん深くかかわったので、ハリーの名な付づけ親おやであるシリウスのことを、ハリーと同じくらい心配していた。しかし、ジニーの前でシリウスの話をするのはよくない。三人とダンブルドア先生以外は誰も、シリウスがどうやって逃げたのかを知らなかったし、無実であることも信じていなかった。