「脳みそがないってわけじゃないのに」おばさんはイライラとしゃべりながら、ソース鍋を竈かまどに載のせ、杖をもう一ひと振ふりして火を焚たきつけた。
「でも頭のむだ使いをしてるのよ。いますぐ心を入れ替かえないと、あの子たち、ほんとにどうしようもなくなるわ。ホグワーツからあの子たちのことで受け取ったふくろう便びんときたら、他の子のを全部合わせた数より多いんだから。このままいったら、ゆくゆくは『魔ま法ほう不ふ適てき正せい使し用よう取とり締しまり局きょく』のご厄やっ介かいになることでしょうよ」
ウィーズリーおばさんが杖を、ナイフやフォークの入った引き出しに向けて一ひと突つきすると、引き出しが勢いよく開いた。庖ほう丁ちょうが数本引き出しから舞い上がり、キッチンを横切って飛んだので、ハリーとロンは飛び退のいて道を空あけた。庖丁は、塵取りが集めて流しに戻したばかりのジャガイモを、切り刻きざみはじめた。
「どこで育て方を間違えたのかしらね」
ウィーズリーおばさんは杖を置くと、またソース鍋をいくつか引っ張り出した。
「もう何年もおんなじことの繰り返し。次から次と。あの子たち、言うことを聞かないんだから――ンまっ、まただわ!」
おばさんがテーブルから杖を取り上げると、杖がチューチューと大きな声を上げて、巨大なゴム製のおもちゃのネズミになってしまったのだ。
「また『だまし杖づえ』だわ!」おばさんが怒ど鳴なった。「こんなものを置きっぱなしにしちゃいけないって、あの子たちに何度言ったらわかるのかしら?」
本物の杖を取り上げておばさんが振り向くと、竈にかけたソース鍋が煙を上げていた。
「行こう」引き出しからナイフやフォークをひとつかみ取り出しながら、ロンが慌あわてて言った。「外に行ってビルとチャーリーを手伝おう」
二人はおばさんをあとに残して、勝かっ手て口ぐちから裏うら庭にわに出た。