「僕がやるよ」ハリーはダドリーの腕を取り、よいしょと引っ張った。さんざん苦労して、ハリーはなんとかダドリーを立ち上がらせたが、ダドリーは気絶しかけているようだった。小さな目がぐるぐる回り、額ひたいには汗が噴ふき出している。ハリーが手を離はなしたとたん、ダドリーの体がぐらっと危なっかしげに傾かしいだ。
「急ぐんだ」フィッグばあさんがヒステリックに言った。
ハリーはダドリーの巨大な腕の片かた方ほうを自分の肩に回し、その重みで腰を曲げながら、ダドリーを引きずるようにして表通りに向かった。フィッグばあさんは、二人の前をちょこまか走り、路地の角で不安げに表通りを窺うかがった。
「杖つえを出しときな」ウィステリア・ウォークに入るとき、ばあさんがハリーに言った。
「『機き密みつ保ほ持じ法ほう』なんて、もう気にしなくていいんだ。どうせめちゃめちゃに高いつけを払うことになるんだから、卵たまご泥どろ棒ぼうで捕つかまるより、いっそドラゴンを盗んで捕まるほうがいいってもんさ。『未み成せい年ねんの制せい限げん事じ項こう』と言えば……ダンブルドアが心配なすってたのは、まさにこれだったんだ――通りの向こう端にいるのはなんだ ああ、ミスター・プレンティスかい……ほら、杖を下ろすんじゃないよ。あたしゃ役立たずだって、何度も言っただろう」
杖を掲かかげながら、同時にダドリーを引っ張っていくのは楽ではなかった。ハリーはイライラして、いとこの肋あばら骨ぼねに一発お見み舞まいしたが、ダドリーは自分で動こうとする気持をいっさい失ったかのようだった。ハリーの肩にもたれかかったまま、でかい足が地面をズルズル引きずっていた。
「フィッグさん、スクイブだってことをどうして教えてくれなかったの」ハリーは歩き続けるだけで精せい一いっ杯ぱいで、息を切らしながら聞いた。「ずっとあなたの家に行ってたのに――どうして何にも言ってくれなかったの」
「ダンブルドアのお言いつけさ。あたしゃ、あんたを見み張はってたけど、なんにも言わないことになってた。あんたは若すぎたし。ハリー、辛つらい思いをさせてすまなかったね。でも、あんたがあたしんとこに来るのが楽しいなんて思うようじゃ、ダーズリーはあんたを預あずけなかったろうよ。わかるだろ。あたしも楽じゃなかった……しかし、ああ、どうしよう」
ばあさんは、また手を揉もみしだきながら悲痛ひつうな声を出した。
「ダンブルドアがこのことを聞いたら――マンダンガスのやつ、夜中までの任務にんむのはずだったのになんで行っちまったんだい――あいつはどこにいるんだ ダンブルドアに事件を知らせるのに、どうしたらいいんだろ あたしゃ、『姿すがた現あらわし』できないんだ」
「僕、ふくろうを持ってるよ。使っていいです」ハリーはダドリーの重みで背骨が折れるのではないかと思いながら呻うめいた。