「ダンブルドアがあいつを死し刑けいにすりゃあいいんだ」フィッグばあさんは怒り狂っていた。
「さあ、ハリー、早く。なにをぐずぐずしてるんだい」
ハリーは、大荷物のダドリーの下で、歩くのがやっとだと言いたかったが、すでに息絶いきたえ絶だえで、これ以上息のむだ使いはしないことにした。半はん死し半はん生しょうのダドリーを揺ゆすり上げ、よろよろと前進した。
「戸口まで送るよ」プリベット通りに入るとフィッグばあさんが言った。「連中がまだそのへんにいるかもしれん……ああ、まったく。なんてひどいこった……そいで、おまえさんは自分でやつらを撃げき退たいしなきゃならなかった……そいで、ダンブルドアは、どんなことがあってもおまえさんに魔法を使わせるなって、あたしらにお言いつけなすった……まあ、こぼれた魔法薬、盆ぼんに帰らずってとこか……しかし、猫の尾を踏ふんじまったね」
「それじゃ」ハリーは喘あえぎながら言った。「ダンブルドアは……ずっと僕を……追つけさせてたの」
「もちろんさ」フィッグばあさんが急せき込こんで言った。「ダンブルドアがおまえさんを独ひとりでほっつき歩かせると思うかい 六月にあんなことが起こったあとで まさか、あんた。もう少し賢かしこいかと思ってたよ……さあ……家の中に入って、じっとしてるんだよ」三人は四番地に到着していた。「だれかがまもなくあんたに連絡してくるはずだ」
「おばあさんはどうするの」ハリーが急いで聞いた。
「あたしゃ、まっすぐ家に帰るさ」フィッグばあさんは暗くら闇やみをじっと見回して、身震みぶるいしながら言った。「指令しれいが来るのを待たなきゃならないんでね。とにかく家の中にいるんだよ。おやすみ」
「待って。まだ行かないで 僕、知りたいことが――」
しかし、スリッパをパタパタ、手て提さげ袋をカタカタ鳴らして、フィッグばあさんはもう小走こばしりに駆かけ出していた。
「待って」
ハリーは追いすがるように叫さけんだ。ダンブルドアと接せっ触しょくのある人なら誰でもいいから、聞きたいことがごまんとあった。しかし、あっという間に、フィッグばあさんは闇に呑のまれていった。顔をしかめ、ハリーはダドリーを背負い直し、四番地の庭の小道を痛々しくゆっくりと歩いて行った。