「ふくろうめ」バーノンおじさんが喚わめいた。こめかみに、お馴な染じみの怒りの青あお筋すじをピクピクさせ、おじさんはキッチンの窓をピシャリと閉めた。「またふくろうだ わしの家でこれ以上ふくろうは許さん」
しかしハリーは、すでに封筒を破り、中から手紙を引っ張り出していた。心臓は喉のど仏ぼとけのあたりでドキドキしている。
親しん愛あいなるポッター殿
我々の把握はあくした情報によれば、貴殿きでんは今夜九時二十三分過ぎ、マグルの居きょ住じゅう地ち区くにて、マグルの面前で、守しゅ護ご霊れいの呪じゅ文もんを行使した。
「未み成せい年ねん魔ま法ほう使つかいの妥当だとうな制せい限げんに関する法ほう令れい」の重大な違反いはんにより、貴殿はホグワーツ魔法魔術学校を退学処しょ分ぶんとなる。魔法省の役人がまもなく貴殿の住居に出向き、貴殿の杖つえを破は壊かいするであろう。
貴殿には、すでに「国こく際さい魔ま法ほう戦せん士し連れん盟めい機き密みつ保ほ持じ法ほう」の第十三条違反の前科ぜんかがあるため、遺憾いかんながら、貴殿は魔法省の懲ちょう戒かい尋じん問もんへの出席が要求されることをお知らせする。尋問は八月十二日午前九時から魔法省にて行われる。
貴殿のご健けん勝しょうをお祈いのりいたします。
敬具けいぐ
魔法省
魔法不ふ適てき正せい使し用よう取とり締しまり局きょく
マファルダ・ホップカーク
ハリーは手紙を二度読んだ。バーノンおじさんとペチュニアおばさんが話しているのを、ハリーはぼんやりとしか感じ取れなかった。頭の中が冷たくなって痺しびれていた。たった一つのことだけが、毒矢どくやのように意識を貫つらぬき痺れさせた。僕はホグワーツを退学になった。すべてお終しまいだ。もう戻れない。
ハリーはダーズリー親子を見た。バーノンおじさんは顔を赤あか紫むらさき色いろにして叫さけび、拳こぶしを振り上げている。ペチュニアおばさんは両腕をダドリーに回し、ダドリーはまたゲーゲーやり出していた。
一時的に麻ま痺ひしていたハリーの脳が再び目を覚ましたようだった。魔法省の役人がまもなく貴殿きでんの住居に出向き、貴殿の杖つえを破は壊かいするであろう。道はただ一つだ。逃げるしかない――すぐに。どこに行けばいいのか、ハリーにはわからない。しかし、一つだけはっきりしている。ホグワーツだろうとそれ以外だろうと、ハリーには杖が必要だ。ほとんど夢む遊ゆう病びょうのように、ハリーは杖を引っ張り出し、キッチンを出ようとした。