ペチュニアおばさんは、自分自身にぎょっとしたようだった。おどおどと謝あやまるような目でバーノンおじさんをチラッと見て、口から少し手を下ろし、馬のような歯を覗のぞかせた。
「聞こえたのよ――ずっと昔――あのとんでもない若わか造ぞうが――あの妹にそいつらのことを話しているのを」ペチュニアおばさんはぎくしゃく答えた。
「僕の父さんと母さんのことを言ってるのなら、どうして名前で呼ばないの」ハリーは大声を出したが、ペチュニアおばさんは無む視しした。おばさんはひどく慌あわてふためいているようだった。
ハリーは呆ぼう然ぜんとしていた。何年か前にたった一度、おばさんはハリーの母親を奇人きじん呼ばわりしたことがあった。それ以外、おばさんが自分の妹のことに触ふれるのを、ハリーは聞いたことがなかった。普段ふだんは魔法界が存在しないかのように振舞ふるまうのに全精せい力りょくを注ぎ込んでいるおばさんが、魔法界についての断だん片ぺん的てき情報を、こんなに長い間憶おぼえていたことにハリーは驚きょう愕がくしていた。
バーノンおじさんが口を開き、口を閉じ、もう一度開いて、閉じた。まるでどうやって話すのかを思い出すのに四し苦く八はっ苦くしているかのように、三度目に口を開いて、嗄しわがれ声を出した。「それじゃ――じゃ――そいつらは――えー――そいつらは――あー――本当にいるのだな――えー――キューコンなんとかは」
ペチュニアおばさんが頷うなずいた。
バーノンおじさんは、ペチュニアおばさんからダドリー、そしてハリーと順に見た。まるで、誰かが、「エイプリルフール」と叫さけぶのを期待しているかのようだ。誰も叫ばない。そこでもう一度口を開いた。しかし、続きの言葉を探す苦労をせずにすんだ。今夜三羽目のふくろうが到とう着ちゃくしたのだ。まだ開あいたままになっていた窓から、羽の生はえた砲ほう弾だんのように飛び込んできて、キッチン・テーブルの上にカタカタと音を立てて降おり立った。ダーズリー親子三人が怯おびえて飛び上がった。ハリーは、二通目の公こう式しき文ぶん書しょ風ふうの封筒を、ふくろうの嘴くちばしからもぎ取った。ビリビリ開封している間に、ふくろうはスイーッと夜空に戻っていった。