しかし、バーノンおじさんの言葉で、疲れ切ったハリーの脳みそが再び動き出した。なぜ吸きゅう魂こん鬼きがリトル・ウィンジングにやってきたのか ハリーが路地にいるとき、やつらがそこにやってきたのは果たして偶ぐう然ぜんだろうか 誰かがやつらを送ってよこしたのか 魔法省は吸魂鬼を制せい御ぎょできなくなったのか やつらはアズカバンを捨すてて、ダンブルドアが予想したとおりヴォルデモートに与くみしたのか
「そのキュウコンバーは、妙みょうちきりんな監かん獄ごくとやらをガードしとるのか」バーノンおじさんは、ハリーの考えている道みち筋すじに、ドシンドシンと踏ふみ込こんできた。
「ああ」ハリーが答えた。
頭の痛みが止まってくれさえしたら。キッチンから出て、暗い自分の部屋に戻り、考えることさえできたら……。
「おッホー やつらはおまえを捕つかまえにきたんだ」バーノンおじさんは絶対間違いない結けつ論ろんに達したときのような、勝ち誇ほこった口調で言った。「そうだ。そうだろう、小僧こぞう おまえは法を犯おかして逃とう亡ぼう中ちゅうというわけだ」
「もちろん、違う」ハリーは蠅はえを追うように頭を振った。いろいろな考えが目まぐるしく浮かんできた。
「それならなぜだ――」
「『あの人』が送り込んだに違いない」ハリーはおじさんにというより自分に聞かせるように低い声で言った。
「なんだ、それは 誰が送り込んだと」
「ヴォルデモート卿きょうだ」ハリーが言った。
ダーズリー一家は、「魔法使い」とか「魔法」、「杖つえ」などという言葉を聞くと、後あと退ずさったり、ぎくりとしたり、ギャーギャー騒いだりするのに、歴史上もっとも極ごく悪あく非ひ道どうの魔法使いの名を聞いてもぴくりともしないのは、なんて奇き妙みょうなんだろうとハリーはぼんやりそう思った。