「そうなんだ」こんどは、ハリーはペチュニアおばさんに直接に話しかけた。「一ヵ月前に戻ってきた。僕は見たんだ」
おばさんの両手が、ダドリーの革ジャンの上から巨大な肩に触ふれ、ぎゅっと握にぎった。
「ちょっと待った」
バーノンおじさんは、妻からハリーへ、そしてまた妻へと視線しせんを移し、二人の間に前ぜん代だい未み聞もんの理解が湧わき起こったことに戸惑とまどい、呆ぼう然ぜんとしていた。
「待てよ。そのヴォルデなんとか卿が戻ったと、そう言うのだな」
「そうだよ」
「おまえの両親を殺したやつだな」
「そうだよ」
「そして、そいつがこんどはおまえにキューコンバーを送ってよこしたと」
「そうらしい」ハリーが言った。
「なるほど」
バーノンおじさんは真まっ青さおな妻の顔を見て、ハリーを見た。そしてズボンをずり上げた。おじさんの体が膨ふくれ上がってきたかのようだった。でっかい赤あか紫むらさき色いろの顔が、見る見る巨大になってきた。
「さあ、これで決まりだ」おじさんが言った。体が膨れ上がったので、シャツの前がきつくなっていた。「小僧こぞう この家を出て行ってもらうぞ」
「えっ」
「聞こえたろう――出ていけ」バーノンおじさんが大声を出した。ペチュニアおばさんやダドリーでさえ飛び上がった。「出ていけ 出ていけ とっくの昔にそうすべきだった ふくろうはここを休きゅう息そく所じょ扱あつかい、デザートは破裂はれつするわ、客きゃく間まの半分は壊こわされるわ、ダドリーに尻尾しっぽだわ、マージは膨ふくらんで天井をポンポンするわ、その上空飛ぶフォード・アングリアだ――出ていけ 出ていけ もうおしまいだ おまえのことはすべて終りだ 狂ったやつがおまえを追つけているなら、ここに置いてはおけん。おまえのせいで妻と息子を危険に曝さらさせはせんぞ。もうおまえに面倒を持ち込ませはせん。おまえが碌ろくでなしの両親と同じ道をたどるのなら、わしはもうたくさんだ 出ていけ」
ハリーはその場に根が生はえたように立っていた。魔ま法ほう省しょうの手紙、ウィーズリーおじさんとシリウスからの手紙が、みんなハリーの左手の中でつぶれていた。
何があろうとも、決して家を離はなれてはいけない。おじさん、おばさんの家を離れないよう。