「聞こえたな」バーノンおじさんがこんどはのしかかってきた。巨大な赤あか紫むらさき色いろの顔がハリーの顔にぐんと接近し、唾つばが顔に降ふりかかるのを感じた。「行けばいいだろう 三十分前はあんなに出て行きたがったおまえだ 大賛成だ 出ていけ 二度とこの家の敷居しきいを跨またぐな そもそも、なんでわしらがおまえを手元に置いたのかわからん。マージの言うとおりだった。孤こ児じ院いんに入れるべきだった。わしらがお人好ひとよしすぎた。あれをおまえの中から叩たたき出してやれると思った。おまえをまともにしてやれると思った。しかし、おまえは根っから腐くさっていた。もうたくさんだ。―――ふくろうだ」
五番目のふくろうが煙突を急きゅう降こう下かしてきて、勢いきおい余あまって床にぶつかり、大声でギーギー鳴きながら再び飛び上がった。ハリーは手を上げて、真まっ赤かな封筒に入った手紙を取ろうとした。しかし、ふくろうはハリーの頭上をまっすぐ飛び越し、ペチュニアおばさんのほうに一直線に向かった。おばさんは悲鳴ひめいを上げ、両腕で顔を覆おおって身をかわした。ふくろうは真っ赤な封筒をおばさんの頭に落とし、方向転てん換かんしてそのまま煙突に戻って行った。
ハリーは手紙を拾ひろおうと飛びついた。しかし、ペチュニアおばさんのほうが早かった。
「開あけたきゃ開けてもいいよ」ハリーが言った。「でもどうせ中身は僕にも聞こえるんだ。それ、『吼ほえメール』だよ」
「ペチュニア、手を離すんだ」バーノンおじさんが喚わめいた。「触さわるな。危険かもしれん」
「私わたし宛あてだわ」ペチュニアおばさんの声が震ふるえていた。「私宛なのよ、バーノン。ほら、プリベット通り四番地、キッチン、ペチュニア・ダーズリー様――」
おばさんは真まっ青さおになって息を止めた。真っ赤な封筒が燻くすぶりはじめたのだ。
「開けて」ハリーが促うながした。「すませてしまうんだ どうせ同じことなんだから」
「いやよ」