僕はさっき吸きゅう魂こん鬼きに襲おそわれた。それに、ホグワーツを退学させられるかもしれない。何が起こっているのか、いったい僕はいつここから出られるのか知りたい。
暗い寝しん室しつに戻るや否いなや、ハリーは同じ文面を三枚の羊よう皮ひ紙しに書いた。最初のはシリウス宛あて、二番目はロン、三番目はハーマイオニー宛だ。ハリーのふくろう、ヘドウィグは狩かりに出かけていて、机の上の鳥とり籠かごは空っぽだ。ハリーはヘドウィグの帰りを待ちながら、部屋を往いったり来たりした。目がちくちく痛むほど疲れてはいたが、頭がガンガンし、次々といろいろな思いが浮かんで眠れそうになかった。ダドリーを家まで背負ってきたので、背中が痛み、窓にぶつかったときとダドリーに殴なぐられたときの瘤こぶがズキズキ痛んだ。
歯は噛がみし、拳こぶしを握にぎり締しめ、部屋を往ったり来たりしながら、ハリーは怒りと焦しょう燥そう感かんで疲れ果てていた。窓まど際ぎわを通るたびに、何の姿も見えない星ばかりの夜空を、怒りを込めて見上げた。ハリーを始末しまつするのに吸きゅう魂こん鬼きが送られた。フィッグばあさんとマンダンガス・フレッチャーがこっそりハリーの跡あとを追つけていた。その上、ホグワーツの停てい学がく処しょ分ぶんに加えて魔法省での尋じん問もん――それなのに、まだ誰も何にも教えてくれない。
それに、あの「吼ほえメール」は何だ。いったい何だったんだ キッチン中に響ひびいた、あの恐ろしい、脅おどすような声は誰の声だったんだ
どうして僕は、何にも知らされずに閉じ込められたままなんだ どうしてみんなは僕のことを、聞き分けのない小こ僧ぞう扱あつかいするんだ
「これ以上魔法を使ってはいけない。家を離はなれるな……」
通りがかりざま、ハリーは学校のトランクを蹴け飛とばした。しかし、怒りが収まるどころか、かえって気が滅め入いった。体中が痛い上に、こんどは爪つま先さきの鋭するどい痛みまで加わった。