「ところで、どこに行くんだい」ハリーが聞いた。「『三本さんぼんの箒ほうき』」
「あ――ううん」ハーマイオニーは我に返って言った。「違う。あそこはいつも一いっ杯ぱいで、とっても騒がしいし。みんなに、『ホッグズ・ヘッド』に集まるように言ったの。ほら、もう一つのパブ、知ってるでしょ。表通りには面してないし、あそこはちょっと……ほら……胡う散さん臭くさいわ……でも生徒は普通あそこには行かないから、盗み聞きされることもないと思うの」
三人は大通りを歩いて「ゾンコの魔ま法ほう悪戯いたずら専せん門もん店てん」の前を通り――当然そこには、フレッド、ジョージ、リーがいた――郵ゆう便びん局きょくの前を過ぎ――そこからはふくろうが定期的に飛び立っている――そして横道に入った。その道のどん詰づまりに小さな旅籠はたごが建っている。ドアの上に張り出した錆さびついた腕木うでぎに、ボロボロの木の看板かんばんが掛かかっていた。ちょん切られたイノシシの首が、周囲の白布を血に染そめている絵が描かいてある。三人が近づくと、看板が風に吹かれてキーキーと音を立てた。三人ともドアの前でためらった。
「さあ、行きましょうか」ハーマイオニーが少しおどおどしながら言った。ハリーが先頭に立って中に入った。
「三本の箒」とはまるで違っていた。あそこの広々したバーは、輝かがやくように暖かく清潔せいけつな印いん象しょうだが、「ホッグズ・ヘッド」のバーは、小さくみすぼらしい、ひどく汚い部屋で、ヤギのようなきつい臭いがした。出窓でまどはべっとり煤すすけて、陽ひの光が中までほとんど射さし込こまない。代わりに、ざらざらした木のテーブルで、ちびた蝋燭ろうそくが部屋を照らしていた。床は一見いっけん、土を踏ふみ固めた土ど間まのように見えたが、ハリーが歩いてみると、実は、何世紀も積もり積もった埃ほこりが石床いしゆかを覆おおっていることがわかった。