「ダンブルドアが先学期話したのは、セドリック・ディゴリーが『例のあの人』に殺されたことと、君がホグワーツまでディゴリーの亡なき骸がらを運んできたことだ。詳くわしいことは話さなかった。ディゴリーがどんなふうに殺されたのかは話してくれなかった。僕たち、みんなそれが知りたいんだと思うな――」
「ヴォルデモートがどんなふうに人を殺すのかをはっきり聞きたいからここに来たのなら、生憎あいにくだったな」ハリーの癇かん癪しゃくはこのごろいつも爆ばく発はつ寸すん前ぜんだったが、いまもだんだん沸騰ふっとうしてきた。ハリーはザカリアス・スミスの挑ちょう戦せん的てきな顔から目を離はなさなかったし、絶対にチョウのほうを見るまいと心を決めていた。「僕は、セドリック・ディゴリーのことを話したくない。わかったか だから、もしみんながそのためにここに来たなら、すぐ出て行ったほうがいい」
ハリーはハーマイオニーのほうに怒りの眼差しを向けた。ハーマイオニーのせいだ。ハーマイオニーがハリーを見み世せ物ものにしようとしたんだ。当然、みんなは、ハリーの話がどんなにとんでもないものか聞いてやろうと思ってやって来たんだ。
しかし、席を立つ者はいなかった。ザカリアス・スミスさえ、ハリーをじっと見つめたままだった。
「それじゃ」ハーマイオニーの声がまた上うわずった。「それじゃ……さっきも言ったように……みんなが防ぼう衛えい術じゅつを習いたいのなら、やり方を決める必要があるわ。会合かいごうの頻度ひんどとか場所とか――」
「ほんとなの」長い三つ編あみを一本背中に垂たらした女子生徒が、ハリーを見ながら口を挟はさんだ。「守しゅ護ご霊れいを創つくり出せるって、ほんと」
集まった生徒が関心かんしんを示してざわめいた。
「うん」ハリーは少し身構みがまえるように言った。
「有体ゆうたいの守しゅ護ご霊れいを」
その言葉でハリーの記憶きおくが蘇よみがえった。
「あ――君、マダム・ボーンズを知ってるのかい」ハリーが聞いた。
女子生徒がにっこりした。
「私のおばよ」その生徒が答えた。「私、スーザン・ボーンズ。おばがあなたの尋じん問もんのことを話してくれたわ。それで――ほんとにほんとなの 牡鹿おじかの守護霊を創つくるって」
「ああ」ハリーが答えた。