「マイケル・コーナーって、どっちのやつだった」ロンが怒り狂って問い詰つめた。
「髪かみの黒いほうよ」ハーマイオニーが言った。
「気に食わないやつだった」間髪かんはつを入れずロンが言った。
「あら、驚おどろいたわ」ハーマイオニーが低い声で言った。
「だけど」ロンは、ハーマイオニーが銅どうの壷つぼに入った羽根ペンを眺ながめて回るあとから、くっついて回った。「ジニーはハリーが好きだと思ってた」
ハーマイオニーは哀あわれむような目でロンを見て、首を振った。
「ジニーはハリーが好きだったわ。だけど、もうずいぶん前に諦あきらめたの。ハリー、あなたのこと好きじゃないってわけではないのよ、もちろん」
ハーマイオニーは、黒と金色の長い羽根ペンを品定しなさだめしながら、ハリーに気遣きづかうようにつけ加えた。
ハリーはチョウが別れ際ぎわに手を振ったことで頭が一いっ杯ぱいで、この話題には、怒りで身を震ふるわせているロンほど関心かんしんがなかった。しかし、それまでは気づかなかったことに、突然気づいた。
「ジニーは、だから僕に話しかけるようになったんだね」ハリーがハーマイオニーに聞いた。「ジニーは、これまで僕の前では口をきかなかったんだ」
「そうよ」ハーマイオニーが言った。「うん、私、これを買おうっと……」
ハーマイオニーはカウンターで十五シックルと二クヌートを支払った。ロンはまだしつこくハーマイオニーの後ろにくっついていた。
「ロン」
振り返った拍ひょう子しにすぐ後ろにいたロンの足を踏ふんづけながら、ハーマイオニーが厳きびしい声で言った。
「これだからジニーは、マイケルとつき合ってることを、あなたに言わなかったのよ。あなたが気を悪くするって、ジニーにはわかってたの。お願いだからくどくどとお説せっ教きょうするんじゃないわよ」
「どういう意味だい 誰が気を悪くするって 僕、何もくどくどなんか……」ロンは通りを歩いている間中、低い声でぶつくさ言い続けた。
ロンがマイケル・コーナーをブツブツ呪のろっている間、ハーマイオニーはハリーに向かって、しょうがないわねという目つきをし、低い声で言った。
「マイケルとジニーと言えば……あなたとチョウはどうなの」
「何が」ハリーが慌あわてて言った。
まるで煮にたった湯が急に胸を突き上げてくるようだった。寒さの中で顔がじんじん火ほ照てった――そんなに見え見えだったのだろうか
「だって」ハーマイオニーが微笑ほほえんだ。「チョウったら、あなたのこと見つめっぱなしだったじゃない」
ホグズミードの村がこんなに美しいとは、ハリーはいままで一度も気づかなかった。