職員室のドアの前に、ガーゴイルの石像が一対いっつい立っていた。ハリーが近づくと、一つが嗄しわがれ声を出した。「そこの坊や、授業中のはずだぞ」
「緊きん急きゅうなんだ」ハリーがぶっきらぼうに言った。
「おぉぉぉぅ、緊急かね」もう一つの石像が甲高かんだかい声で言った。「それじゃ、俺おれたちなんかの出る幕まくじゃないってわけだな」
ハリーはドアを叩たたいた。足音がして、ドアが開き、マクゴナガル先生がハリーの真正面に現れた。
「まさか、また罰則ばっそくを受けたのですか」ハリーを見るなり先生が言った。四角いメガネがギラリと光った。
「違います、先生」ハリーが急いで言った。
「それでは、どうして授業に出ていないのです」
「緊急らしいですぞ」二番目の石像が嘲あざけるように言った。
「グラブリー‐プランク先生を探しています」ハリーが説明した。「僕のふくろうのことで。怪け我がしてるんです」
「手て負おいのふくろう、そう言ったかね」グラブリー‐プランク先生がマクゴナガル先生の脇わきに現れた。パイプを吹かし、「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」を手にしている。
「はい」ハリーはヘドウィグをそっと肩から下ろした。「このふくろうは、ほかの配達はいたつふくろうより遅おくれて到とう着ちゃくして、翼つばさがとってもおかしいんです。診みてください――」
グラブリー‐プランク先生はパイプをがっちり歯でくわえ、マクゴナガル先生の目の前でハリーからヘドウィグを受け取った。
「ふーむ」グラブリー‐プランク先生がしゃべるとパイプがひょこひょこ動いた。「どうやら何かに襲おそわれたね。ただ、何に襲われたのやら、わからんけどね。セストラルは、もちろんときどき鳥を狙ねらうが、しかしホグワーツのセストラルは、ふくろうに手を出さんようにハグリッドがしっかり躾しつけてある」
ハリーはセストラルが何だか知らなかったし、どうでもよかった。ヘドウィグが治なおるかどうかだけが知りたかった。しかし、マクゴナガル先生は厳きびしい目でハリーを見て言った。
「ポッター、このふくろうがどのぐらい遠くから来たのか知っていますか」
「えーと」ハリーが言った。「ロンドンからだと、たぶん」
ハリーがちらりと先生を見ると、眉毛まゆげが真ん中でくっついていた。「ロンドン」が「グリモールド・プレイス十二番地」だと見抜かれたことが、ハリーにはわかった。