「まあ、このクラスは、この学年にしてはかなり進んでいますわね」アンブリッジがスネイプの背中に向かってきびきびと話しかけた。「でも、『強化薬』のような薬をこの子たちに教えるのは、いかがなものかしら。魔法省は、この薬を教きょう材ざいからはずしたほうがよいと考えると思いますね」
スネイプがゆっくりと体を起こし、アンブリッジと向き合った。
「さてと……あなたはホグワーツでどのぐらい教えていますか」アンブリッジが羽根ペンをクリップボードの上で構かまえながら聞いた。
「十四年」スネイプの表情からは何も読めなかった。スネイプから眼めを離はなさず、ハリーは、自分の液体えきたいに材料を数滴すうてき加えた。シューシューと脅おどすような音を立て、溶液ようえきはトルコ石色からオレンジ色に変色した。
「最初は『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の職しょくに応募おうぼしたのでしたわね」アンブリッジ先生がスネイプに聞いた。
「左様さよう」スネイプが低い声で答えた。
「でもうまくいかなかったのね」
スネイプの唇くちびるが冷れい笑しょうした。
「ご覧らんのとおり」
アンブリッジ先生がクリップボードに走り書きした。
「そして赴任ふにんして以来、あなたは毎年『闇の魔術に対する防衛術』に応募したんでしたわね」
「左様」スネイプが、ほとんど唇を動かさずに低い声で答えた。相当怒っている様子だ。
「ダンブルドアが一貫いっかんしてあなたの任命にんめいを拒否きょひしてきたのはなぜなのか、おわかりかしら」
アンブリッジが聞いた。
「本人に聞きたまえ」スネイプが邪険じゃけんに言った。
「ええ、そうしましょう」アンブリッジ先生がにっこり笑いながら言った。
「それが何か意味があるとでも」スネイプが暗い目を細めた。
「ええ、ありますとも」アンブリッジ先生が言った。「ええ、魔法省は先生方の――あー――背景はいけいを、完全に理解しておきたいのですわ」