「行って止めればいいじゃないか」ハリーが我慢がまんできずに言った。グリフィンの鉤爪かぎづめの粉末ふんまつの重量を四回も間違えて消したときだった。
「できないの。あの人たち、規則きそくから言うとなんら悪いことをしていないもの」ハーマイオニーが歯軋はぎしりした。「自分が変なものを食べるのは、あの人たちの権利の範囲はんい内だわ。それに、ほかのおバカさんたちが、そういう物を買う権利がないっていう規則は見当たらない。何か危険だということが証しょう明めいされなければね。それに、危険そうには見えないし」
ジョージが勢いよくバケツに吐き出し、菓子の一方いっぽうの端を噛んですっくと立ち、両手を大きく広げてにっこり笑いながら、いつまでもやまない拍はく手しゅに応こたえるのをハーマイオニー、ハリー、ロンは、じっと眺ながめていた。
「ねえ、フレッドもジョージも、ふくろうで三科目しか合格ごうかくしなかったのはどうしてかなあ」フレッド、ジョージ、リーの三人が、集まった生徒が我勝われがちにさし出す金貨を集めるのを見ながら、ハリーが言った。「あの二人、本当にできるよ」
「あら、あの人たちにできるのは、役にも立たない派は手でなことだけよ」ハーマイオニーが見くびるように言った。
「役に立たないだって」ロンの声が引き攣つった。「ハーマイオニー、あの連中、もう二十六ガリオンは稼かせいだぜ」
双子ふたごのウィーズリーを囲んでいた人垣ひとがきが解散かいさんするまでにしばらくかかった。それから、フレッド、ジョージ、リーが座り込んで稼ぎを数えるのにもっと長くかかった。そして、談だん話わ室しつにハリー、ロン、ハーマイオニーの三人だけになったのは、とうに真夜中を過ぎてからだった。ハーマイオニーのしかめ面つらを尻目しりめに、ガリオン金貨の箱をこれみよがしにジャラジャラ言わせながら、フレッドがようやっと男だん子し寮りょうへのドアを閉めて中に消えた。ハリーの魔法薬のレポートはほとんど進んでいなかったが、今夜は諦あきらめることにした。参考書を片かたづけていると、肘ひじ掛かけ椅い子すでうとうとしていたロンが、寝ね呆ぼけ声を出して目を覚まし、ぼんやり暖炉だんろの火を見た。
「シリウス」ロンが声を上げた。
ハリーがさっと振り向いた。ぼさぼさの黒くろ髪かみの頭が、再び暖炉の炎に座っていた。