「伝言は、『どんなことがあっても違法な『闇やみの魔ま術じゅつ防衛』グループには加わらないこと。きっと退学処分しょぶんになります。あなたの将来がめちゃめちゃになります。もっとあとになれば、自己防衛を学ぶ時間は十分あるのだから、いまそんなことを心配するのはまだ若すぎます』ということだ。それから」シリウスは他の二人に目を向けた。「ハリーとハーマイオニーへの忠ちゅう告こくだ。グループをこれ以上進めないように。もっとも、この二人に関しては、指図さしずする権限けんげんがないことは認めている。ただ、お願いだから、自分は二人のためによかれと思って言っているのだということを忘れないように、とのことだ。手紙が書ければ全部書くのだが、もしふくろうが途と中ちゅうで捕まったら、みんながとても困ることになるだろうし、今夜は当番なので自分で言いにくることができない」
「何の当番」ロンがすかさず聞いた。
「気にするな。騎き士し団だんの何かだ」シリウスが言った。「そこでわたしが伝令でんれいになったというわけだ。わたしがちゃんと伝言したと、母さんに言ってくれ。どうもわたしは信用されていないのでね」
またしばらくみんな沈ちん黙もくした。クルックシャンクスがニャアと鳴いて、シリウスの頭をひっ掻かこうとした。ロンは暖炉だんろマットの穴をいじっていた。
「それじゃ、僕が防ぼう衛えいグループには入らないって、シリウスはそう言わせたいの」しばらくしてロンがボソボソ言った。
「わたしが とんでもない」シリウスが驚おどろいたように言った。「わたしは、すばらしい考えだと思っている」
「ほんと」ハリーは気持が浮き立った。
「もちろん、そう思う」シリウスが言った。「君の父さんやわたしが、あのアンブリッジ鬼婆ばばぁに降参こうさんして言うなりになると思うのか」
「でも――先学期、おじさんは、ぼくに慎しん重ちょうにしろ、危険を冒おかすなってばっかり――」
「先学年は、ハリー、誰かホグワーツの内部の者が、君を殺そうとしてたんだ」シリウスが苛立いらだったように言った。「今学期は、ホグワーツの外の者が、わたしたちを皆殺しにしたがっていることはわかっている。だから、しっかり自分の身を護まもる方法を学ぶのは、わたしはとてもいい考えだと思う」
「そして、もし私たちが退学になったら」ハーマイオニーが訝いぶかしげな表情をした。
「ハーマイオニー、すべては君の考えだったじゃないか」ハリーはハーマイオニーを見み据すえた。
「そうよ。ただ、シリウスの考えはどうかなと思っただけ」ハーマイオニーが肩をすくめた。
「そうだな、学校にいて、何も知らずに安穏あんのんとしているより、退学になっても身を護ることができるほうがいい」
「そうだ、そうだ」ハリーとロンが熱ねっ狂きょうした。
「それで」シリウスが言った。「グループはどんなふうに組織するんだ どこに集まる」
「うん、それがいまちょっと問題なんだ」ハリーが言った。「どこでやったらいいか、わかんない」
「『叫さけびの屋敷やしき』はどうだ」シリウスが提案した。
「へーイ、そりゃいい考えだ」ロンが興こう奮ふんした。しかし、ハーマイオニーは否ひ定てい的てきな声を出したので、三人がハーマイオニーを見た。シリウスの首が炎の中で向きを変えた。