「禁止」
アンジェリーナが虚うつろな声を上げた。その夜遅おそく、談だん話わ室しつでのことだ。
「禁止。シーカーもビーターもいない……いったいどうしろって」
まるで試合に勝ったような気分ではなかった。どちらを向いても、ハリーの目に入るのは、落胆らくたんした、怒りの表情ばかりだった。選手は暖炉だんろの周りにがっくりと腰を下ろしていた。ロンを除のぞく全員だ。ロンは試合のあとから姿が見えなかった。
「絶対不公平よ」アリシアが放心ほうしんしたように言った。「クラッブはどうなの ホイッスルが鳴ってからブラッジャーを打ったのはどうなの アンブリッジはあいつを禁止にした」
「ううん」ジニーが情けなさそうに言った。ハリーを挟はさんで、ジニーとハーマイオニーが座っていた。「書き取りの罰則ばっそくだけ。モンタギューが夕食のときにそのことで笑っていたのを聞いたわ」
「それに、フレッドを禁止にするなんて。何にもやってないのに」アリシアが拳こぶしで膝ひざを叩たたきながら怒りをぶつけた。
「僕がやってないのは、僕のせいじゃない」フレッドが悔くやしげに顔を歪ゆがめた。「君たち三人に押さえられていなけりゃ、あのクズ野郎、打ちのめしてグニャグニャにしてやったのに」
ハリーは惨みじめな思いで暗い窓を見つめた。雪が降ふっていた。つかんでいたスニッチが、いま談だん話わ室しつをブンブン飛び回っている。みんなが催さい眠みん術じゅつにかかったようにその行方ゆくえを目で追っていた。クルックシャンクスが、スニッチを捕つかまえようと、椅子から椅子へと跳とび移っていた。
「私、寝るわ」アンジェリーナがゆっくり立ち上がった。「全部悪い夢だったってことになるかもしれない……明日目が覚めたら、まだ試合をしていなかったってことに……」
アリシアとケイティがそのすぐあとに続いた。しばらくして、フレッドとジョージも、周囲を誰彼だれかれなしに睨にらみつけながら寝室しんしつへと去って行った。ジニーもそれから間もなくいなくなった。ハリーとハーマイオニーだけが暖炉だんろのそばに取り残された。
「ロンを見かけた」ハーマイオニーが低い声で聞いた。
ハリーは首を横に振った。
「私たちを避さけてるんだと思うわ」ハーマイオニーが言った。「どこにいると思――」
ちょうどそのとき、背後でギーッと、「太った婦人レディ」が開く音がして、ロンが肖しょう像ぞう画がの穴を這はい上がってきた。真まっ青さおな顔をして、髪かみには雪がついている。ハリーとハーマイオニーを見ると、はっとその場で動かなくなった。