「よーし、よし」教授が年寄りっぽいわなわな声で言った。「堅かたくなる必要はないでな。さあ、このゆで卵たまご立てを取って、コロコロ回転させてもらえるかの」
全体としてなかなかうまくできたと、ハリーは思った。「浮遊ふゆう呪文」は、間違いなくマルフォイのよりずっとよかった。ただ、まずかったと思ったのは、「変へん色しょく呪じゅ文もん」と「成長呪文」を混同こんどうしたことで、オレンジ色に変わるはずのネズミが、びっくりするほど膨ふくれ上がり、ハリーが間違いに気づいて訂正ていせいするまでに、アナグマほどの大きさになっていた。ハリーはその場にハーマイオニーがいなくてよかったと思い、すんだ後もそのことは黙だまっていたが、ロンには話すことができた。ロンが、ディナー用大皿を大おお茸きのこに変えてしまい、しかもどうしてそうなったかさっぱりわからなかった、と打ち明けたからだ。
その夜ものんびりしている暇ひまはなかった。夕食後は談だん話わ室しつに直行し、次の日の「変へん身しん術じゅつ」の復ふく習しゅうに没頭ぼっとうした。ベッドに入ったとき、ハリーの頭は複雑ふくざつな呪文モデルやら理論でガンガン鳴っていた。
次の日の午前中、筆記ひっき試験しけんでは「取とり替かえ呪文」の定義ていぎを忘れたが、実技のほうは思ったほど悪くはなかった。少なくともイグアナ一匹をまるまる「消失」させることに成功した。一いっ方ぽう悲ひ劇げきは隣となりのテーブルのハンナ・アボットで、完全に上がってしまい、どうやったのか、課題かだいのケナガイタチをどんどん増やしてフラミンゴの群れにしてしまい、鳥を捕つかまえたり大広間から連れ出したりで、試験は十分間中断された。
水曜日は「薬やく草そう学がく」の試験だった「牙きばつきゼラニウム」にちょっと噛かまれたほかは、ハリーはまあまあのできだったと思った。そして、木曜日、「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ほう衛えい術じゅつ」だ。ここで初めて、ハリーは確実に合格ごうかくしたと思った。筆記試験はどの質問にも苦もなく解答かいとうしたし、とくに楽しかったのは、実技だった。玄げん関かんホールへの扉とびらのそばで冷ひややかに見ているアンブリッジの目の前で、ハリーは逆ぎゃく呪のろいや防ぼう衛えい呪じゅ文もんをすべてこなした。
「おーっ、ブラボー」まボねガ妖ー怪ト追放ついほう呪文を完全にやってのけたのを見て、再びハリーの試し験けん官かんをしていたトフティ教きょう授じゅが歓声かんせいを上げた。
「いやあ、実によかった ポッター、これでおしまいじゃが……ただし……」
教授が少し身を乗り出した。
「わしの親友しんゆうのチベリウス・オグデンから、君は守しゅ護ご霊れいを創つくり出せると聞いたのじゃが 特別点はどうじゃな……」
ハリーは杖つえを構かまえ、まっすぐアンブリッジを見つめて、アンブリッジがクビになることを想像した。
「エクスペクト パトローナム 守しゅ護ご霊れいよ来たれ」
杖つえ先さきから銀色の牡鹿おじかが飛び出し、大広間を端から端までゆっくりと駆かけた。試験官全員が振り向いてその動きを見つめた。牡鹿が銀色の霞かすみとなって消えていくと、トフティ教授が静じょう脈みゃくの浮き出たごつごつした手で、夢中になって拍はく手しゅした。
「すばらしい」教授が言った。「よろしい。ポッター、もう行ってよし」
扉とびら脇わきのアンブリッジのそばを通り過ぎるとき、二人の目が合った。アンブリッジのだだっ広い、締しまりのない口元に意地の悪い笑いが浮かんでいた。しかし、ハリーは気にならなかった。自分の大きな思い違いでなければ思い違いということもあるので、誰にも言うつもりはなかったが、たったいま、ハリーはふくろう試験で「おおいによろしい・優ゆう」を取ったはずだ。
“我从自己的好朋友提贝卢斯奥格登那里听说,你可以召唤守护神?为了额外加分……?”
哈利扬起魔杖,径直望着乌姆里奇,想象着她被解雇的情形。“呼神护卫!”他的银色牡鹿从魔杖尖端喷出,慢慢地跑过整个礼堂。主考官们全都转过头注视着它的行进,当它融化成银色的薄雾时,托福追教授用血管突出、皮肤纠结的双手热情地鼓起掌来。