午後の実技は、ハリーの予想していたほど恐ろしいものではなかった。スネイプがかかわっていないと、ハリーはいつもよりずっと落ち着いて魔法薬の調ちょう合ごうができた。ハリーのすぐそばに座っていたネビルも、魔法薬のクラスでハリーが見たことがないほどうれしそうだった。
マーチバンクス教きょう授じゅが、「試験終了です。大おお鍋なべから離はなれてください」と言ったとき、サンプル入りのフラスコにコルク栓せんをしながら、ハリーは、高い点は取れないかもしれないが、運がよければ落第らくだい点は免まぬがれるだろうという気がした。
「残りはたった四つ」グリフィンドールの談だん話わ室しつに戻りながら、パーバティ・パチルがうんざりしたように言った。
「たった」ハーマイオニーが噛かみつくように言った。「私なんか、まだ『数かず占うらない』があるのよ。たぶん一番手強てごわい学科だわ」
誰も噛かみつき返すほど愚おろかではなかったので、ハーマイオニーは怒ど鳴なる相手が見つからず、結局、談話室でのクスクス笑いの声が大きすぎると、一年生を何人か叱しかりつけるだけで終った。
ハリーは、ハグリッドの体面たいめんを保たもつために、火曜日の「魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」は絶対によい成績せいせきを取ろうと決心していた。実技試験は禁きんじられた森の端はたの芝生しばふで、午後に行われた。まず、十二匹のハリネズミの中に隠れているナールを正確に見分ける試験だったコツは、順番にミルクを与えることだ。ナールの針にはいろいろな魔力があり、非常に疑り深く、ミルクを見ると自分を毒殺するつもりだと疑って狂きょう暴ぼうになることが多い。次にボウトラックルの正しい扱あつかい方、大おお火傷やけどを負わずに火蟹ひがにに餌えさをやり、小屋を清掃せいそうすること、たくさんある餌の中から病気の一角獣ユニコーンに与える食餌しょくじを選ぶことだった。
ハグリッドが小屋の窓から心配そうに覗のぞいているのが見えた。今日の試し験けん官かんはぽっちゃりした小柄こがらな魔女だったが、ハリーに微笑ほほえみかけて、もう行ってよろしいと言ったとき、ハリーは城に戻る前に、ハグリッドに向かって「大だい丈じょう夫ぶ」と親指をさっと上げて見せた。