水曜の午前中、「天てん文もん学がく」の筆記ひっき試験は十分なできだった。木星の衛星えいせいの名前を全部正しく書いたかどうかは自信がなかったが、少なくともどの衛星にも小ネズミは棲すんでいないという確信かくしんがあった。実技試験は夜まで待たなければならなかったので、午後はその代わりに「占うらない学」だった。
「占い学」に対するハリーの期待はもともと低かったが、それにしても結果は惨憺さんたんたるものだった。水すい晶しょう玉だまは頑がんとして何も見せてくれず、机の上で絵が動くのを見る努力をしたほうがまだましだと思った。「茶の葉占い」では完全に頭に血が上り、マーチバンクス教きょう授じゅはまもなく丸くて黒いびしょ濡ぬれの見知らぬ者と出会うことになると予言した。大失敗の極きわめつきは、「手て相そう学がく」で生命線と知能線を取り違え、マーチバンクス教授は先週の火曜日に死んでいたはずだと告げたことだった。
「まあな、こいつは落第らくだいすることになってたんだよ」
大だい理り石せきの階段を上りながら、ロンががっくりして言った。ロンの打ち明け話で、ハリーは少し気分が軽くなっていた。ロンは水すい晶しょう玉だまに鼻に疣いぼがある醜みにくい男が見えると、試し験けん官かんに詳くわしく描びょう写しゃしてみせたらしい。目を上げてみれば、玉に映うつった試験官本人の顔を説明していたことに気づいたと言うのだ。
「こんなバカげた学科はそもそも最初から取るべきじゃなかったんだ」ハリーが言った。
「でも、これでもうやめられるぞ」ロンが言った。
「ああ、木星と天てん王のう星せいが親しくなりすぎたらどうなるかと心配するふりはもうやめだ」ハリーが言った。
「それに、これからは、茶の葉が『死ね、ロン、死ね』なんて書いたって気にするもんか――しかるべき場所、つまりゴミ箱に捨すててやる」
ハリーが笑った。そのとき後ろからハーマイオニーが走ってきて二人に追いついた。癇かんに障さわるのはまずいと、ハリーはすぐに笑いを止めた。
「ねえ、『数かず占うらない』はうまくいったと思うわ」ハリーとロンはほっとため息をついた。「じゃ、夕食の前に、急いで星せい座ざ図ずを見直す時間があるわね……」