最後の試験は「魔ま法ほう史し」で、午後に行われる予定だった。朝食後、ハリーはまたベッドに戻りたくてしかたがなかった。しかし、午前中を最後の追い込みに当てていたので、談話室の窓際まどぎわに座り、両手で頭を抱え、必死で眠り込まないようにしながら、ハーマイオニーが貸かしてくれた一メートルの高さに積み上げられたノートを拾ひろい読みした。
五年生は二時に大広間に入り、裏返うらがえしにされた試験問題の前に座った。ハリーは疲れ果てていた。とにかくこれを終えて眠りたい。そして明日、ロンと二人でクィディッチ競技場に行こう――ロンの箒ほうきを借かりて飛ぶんだ――そして、勉強から解放かいほうされた自由を味わうんだ。
「試験問題を開けて」大広間の奥からマーチバンクス教きょう授じゅが合図し、巨大な砂時計をひっくり返した。「始めてよろしい」
ハリーは最初の問題をじっと見た。数秒後に、一言も頭に入っていない自分に気づいた。高窓たかまどの一つにスズメバチがぶつかり、ブンブンと気が散る音を立てていた。ゆっくりと、まだるっこく、ハリーはやっと答えを書きはじめた。
名前がなかなか思い出せなかったし、年号もあやふやだった。四番の問題に飛んだ。
四、杖つえ規き制せい法ほうは、十八世紀の小こ鬼おにの反乱はんらんの原因になったか。それとも反乱をよりよく掌しょう握あくするのに役立ったか。意見を述べよ。
時間があったらあとでこの問題に戻ろうと思った。第五問に挑ちょう戦せんした。
五、一七四九年の秘ひ密みつ保ほ護ご法ほうの違反いはんはどのようなものであったか。また、再さい発はつ防ぼう止しのためにどのような手段しゅだんが導どう入にゅうされたか。
自分の答えは重要な点をいくつか見落としているような気がして、どうにも気がかりだ。どこかで吸きゅう血けつ鬼きが登場したような感じがする。
ハリーは後ろのほうの問題を見て、絶対に答えられるものを探した。十番の問題に目が止まった。
十、国こく際さい魔法使い連れん盟めいの結成けっせいに至いたる状況を記き述じゅつせよ。また、リヒテンシュタインの魔法戦士が加盟かめいを拒否きょひした理由を説明せよ。
頭はどんよりとして動かなかったが、これならわかる、とハリーは思った。ハーマイオニーの手書きの見出しが目に浮かぶ。「国際魔法使い連盟の結成」……このノートは今朝読んだばかりだ。
ハリーは書きはじめた。ときどき目を上げてマーチバンクス教授の脇わきの机に置いてある大型砂時計を見た。ハリーの真ん前はパーバティ・パチルで、長い黒くろ髪かみが椅子の背よりも下に流れていた。一、二度、パーバティが頭を少し動かすたびに、髪に小さな金色の光が煌きらめくのをじっと見つめている自分に気づき、ハリーは自分の頭をブルブルッと振ってはっきりさせなければならなかった。